家庭医学館 「急性前立腺炎」の解説
きゅうせいぜんりつせんえん【急性前立腺炎 Acute Prostatitis】
尿道(にょうどう)から侵入した細菌が、尿道の奥にある前立腺に感染しておこる病気です。前立腺が炎症のために充血して腫(は)れあがります。
尿道から細菌が入る以外に、からだのほかの場所に感染症がある場合には、その場所の細菌が、血流にのって前立腺に運ばれ、感染がおこることもあります。
高齢者におこる前立腺肥大症(「前立腺肥大症」)とは異なり、思春期以降の男性なら、年齢に関係なくおこりますが、前立腺肥大症にかかっている患者さんに合併しておこることも多いものです。
また、糖尿病の人は、細菌に対する抵抗力が弱いため、感染をおこしやすいので、急性前立腺炎にかかりやすいことがあります。
[症状]
尿道や会陰部(えいんぶ)に痛みがあり、とくに排尿の終わりに熱感や痛み(排尿痛)、尿が出きっていないという残尿感(ざんにょうかん)を感じ、頻尿(ひんにょう)(排尿の回数が多くなる)になります。
尿は濁って、排尿の終わりに血尿(けつにょう)(「尿の異常のいろいろ」の血尿)が出たり、尿道から膿(うみ)が出たりします。高熱をともない、食欲不振などの全身症状もおこります。
[検査と診断]
尿の中に細菌や膿が出ていないかを検査します。尿中に膿が出ていて、高熱をともなっていれば、急性腎盂腎炎(じんうじんえん)(「急性腎盂腎炎」)か急性前立腺炎のどちらかです。
肛門(こうもん)から指を入れ、前立腺をさわってみれば、診断がつきますが、急性期に前立腺をさわると悪化することがあるので、前立腺マッサージ(コラム「前立腺マッサージの効果」)は、初回には行なわないこともあります。
[治療]
高熱があって重篤(じゅうとく)(病気が重い)な場合、入院が必要になります。
入院後、細菌に効果のある抗菌薬が点滴によって使用されます。これで熱が下がるのに4、5日はかかります。その後は飲み薬にかわり、退院となります。
病気が重くなければ、通院して薬の服用だけで治療できます。
尿検査で膿が出なくなっても、分泌腺(ぶんぴつせん)に巣くっている菌を完全に除くことはなかなかむずかしいことが多く、退院しても、飲み薬を2~4週間飲み続けます。
水分を多めにとって尿量を増やし、指示された薬をきちんと服用し、医師がよいというまで治療に通うことがたいせつです。
急性前立腺炎のうちにきちんと治さないと、治りにくい慢性前立腺炎(「慢性前立腺炎」)になったりします。