尿の異常のいろいろ(読み)にょうのいじょうのいろいろ

家庭医学館 「尿の異常のいろいろ」の解説

にょうのいじょうのいろいろ【尿の異常のいろいろ】

 正常な尿は、からだにいらなくなったもの、余分なものを水に溶かし出して排泄(はいせつ)するための重要な溶液です。したがって、尿の異常というのは、腎臓(じんぞう)や尿路(にょうろ)の異常を示すことになります。尿を検査すれば、腎臓や尿路の異常がわかるわけです。
◎尿量の異常
 まず、尿の量が問題になります。量によって多尿(たにょう)、乏尿(ぼうにょう)、無尿(むにょう)と分けます。水分を多くとったときに多尿になるのは病的ではありませんが、多飲が一次的な原因でない多尿は、からだの脱水をひきおこしたりし、異常です。
 これは、糖尿病など代謝性の疾患のほかに、尿崩症(にょうほうしょう)(「尿崩症」)、慢性腎不全(まんせいじんふぜん)(「慢性腎不全」)、精神的な問題で多飲になった心因性多飲などが原因としてあげられます。
 水分を多くとっていても、また発汗量を考えてみても、1日の尿量の合計が400mℓに満たないものを乏尿(ぼうにょう)といいます。原因としては、まず急性腎機能不全が考えられます。
◎検査でわかる異常
 最近の尿の検査は、専用の試験紙に少量の尿をつけると、pH、たんぱく、糖、ウロビリノーゲン潜血(せんけつ)、白血球(はっけっきゅう)などの数値が、同時にほぼわかってしまいます。
 このうち、腎臓、尿路の病気に深い関係があるのは、たんぱくや、肉眼では見えない潜血、白血球などです。
●たんぱく尿
 たんぱくが含まれているたんぱく尿は、腎臓病のたしかな証拠になります。腎臓の糸球体(しきゅうたい)や尿細管(にょうさいかん)の膜構造(まくこうぞう)が乱れて、本来は通してはいけない血液中のたんぱくが、もれ出るのが原因です。
 しかし、無害なたんぱく尿もありますので、たんぱく尿だからといって、腎臓病と断定的に考えるのは早計です。たんぱく尿が出たら腎臓病を疑いながら、詳しい検査をするというように考えておけばよいでしょう。
●血尿(けつにょう)
 血尿は、尿に赤血球(せっけっきゅう)がまじるものです。血尿になる病気には、腎臓病のほかに、尿路の病気があります。
 腎臓病の血尿と、尿路の病気によって出る血尿のおもなちがいは、腎臓病ならかなりの程度のたんぱく尿も出るのに対して、尿路の病気ならば、血尿がひどくても、たんぱく尿が出ることは少ないことです。
 血尿には、肉眼でも血がまじっているとわかる肉眼的血尿(にくがんてきけつにょう)と、肉眼ではわからない顕微鏡的血尿(けんびきょうてきけつにょう)があります。
 これは、含まれる赤血球の量によるもので、本質的なちがいはありません。しかし、尿路の病気による血尿には、肉眼的血尿がきわめて多いことは、注意する必要があります。
 また、尿路の病気による血尿では、尿路に腫瘍(しゅよう)ができているためであることが多く、60歳以上の人に多発します。
 しかし、これらのちがいは、およそのことにすぎません。たとえば、IgA腎症(アイジーエーじんしょう)(「IgA腎症」)では肉眼的血尿がみられることがありますが、この病気は若い人だけでなく、中年過ぎの人にもみられます。
 血尿のもう1つの区別法は、尿を遠心沈殿器にかけて、赤血球を顕微鏡で観察してみる方法です。こうしてみると、尿路からの赤血球は粒(直径7(1μmは、1mの100万分の1))がそろっているのに対し、腎臓由来の赤血球は大きさも小さいものが多く、形も整っていないという特徴があります。
 しかし、尿を調べるのに時間をかけたりするより、泌尿器科(ひにょうきか)の専門医と相談して、はやく別の検査をして原因をはっきりさせたほうがよいと思います。なぜなら、血尿は重大な病気の警鐘だからです。
 尿路由来の血尿の原因の多くは、悪性腫瘍(あくせいしゅよう)(がん)です。腎盂(じんう)、尿管(にょうかん)、膀胱(ぼうこう)、尿道(にょうどう)などのいずれのがんからも出血して、それが尿に出てきます(泌尿器のがん(「腎細胞がん」))。
 このうちでは、膀胱がんであることの頻度がもっとも多く、膀胱がんの初発症状の90%が血尿で、しかも肉眼的血尿であるといわれています。
 なお、悪性腫瘍による血尿には、がん細胞がまじっていることがあり、細胞診(さいぼうしん)という特殊な方法で調べることができます。この方法は、尿を調べるだけで、からだへの負担が少ないがんの検査法なのですが、残念ながら検出率はあまりよくありません。
 その点、内視鏡(ないしきょう)による検査は腎盂まで観察できるようになっていて、もっとも確実ながんの発見法です。
 結石(けっせき)も血尿の原因になります。結石の場合の血尿には、しばしば痛みがともないます。
 また、炎症でも血尿が出ることがあります。膀胱炎の急性期には、排尿の最後に、しぼられるような痛みとともに、出血(血尿)があるということもまれではありません。また、膿(うみ)(白血球)や細菌が尿に出ます。
●膿尿(のうにょう)
 膿(うみ)とは、白血球が細菌と戦って、それらの死んだものによってできるので、膿のまじった膿尿は、細菌の含まれる細菌尿(さいきんにょう)でもあることが多いのです。膿が多くなると、白濁した尿としてみられます。
 このような尿は、膀胱炎(ぼうこうえん)(「膀胱炎」)、尿道炎(にょうどうえん)(「尿道炎」)、前立腺炎(ぜんりつせんえん)(「急性前立腺炎」)などによくみられ、これらの病気を尿路感染症といいます。こうした尿を遠心沈殿器にかけると、沈渣(ちんさ)から細菌が検出されます。
 細菌が見つからず、膿尿だけのものを無菌性膿尿(むきんせいのうにょう)といいますが、これは、抗菌薬を服用していたり、尿路結核(にょうろけっかく)のときにみられる現象です。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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