日本大百科全書(ニッポニカ) 「性器期」の意味・わかりやすい解説
性器期
せいきき
genital phase
フロイトの精神分析の性心理的発達の最終段階で、性的に成熟してくる思春期以降のことをいう。幼児的な口唇衝動、肛門(こうもん)衝動、男根衝動などの部分衝動は、この段階において生殖活動という目標のもとに性器体制として統合される。これを性器統裁という。性器期以前では、身体の諸器官によって快感を得ることが目的となるが、この段階になると生殖が目的となり、一個の人格をもった人間として性対象を求めるようになる。性器的体制が確立すると、自我はエスや超自我から過剰な圧力を受けることがなく、学問、芸術、スポーツなど文化的、社会的に高く評価される現実の活動にエネルギーを使うことができるようになる。これに対して、前性器期の部分衝動が統合されずに母親や父親に対する愛情が固着すると、正常な性器的な体制が発達せず、さまざまな性的倒錯が生ずることになる。
[川幡政道]
『ジークムント・フロイト著、中山元編訳「性欲論三篇」(『エロス論集』所収・ちくま学芸文庫)』