怪しむ(読み)アヤシム

デジタル大辞泉 「怪しむ」の意味・読み・例文・類語

あやし・む【怪しむ】

[動マ五(四)]形容詞「あやし」の動詞化》変だと思う。疑わしく思う。いぶかる。「人に―・まれる」「成功するかどうか―・む」
[動マ下二]怪しいものと認める。とがめる。
「此の勢一所に集まらば、人に―・めらるべしとて」〈太平記・二四〉
[類語]疑ういぶかる疑る怪訝

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「怪しむ」の意味・読み・例文・類語

あやし‐・む【怪】

  1. [ 1 ] 〘 他動詞 マ行五(四) 〙 ( 形容詞「あやし」の動詞化 ) 物の正体や、物事の真相、原因などがわからなくて不思議だと思う。また、変だと思ってとがめだてをする。うたがう。いぶかる。あやしぶ。
    1. [初出の実例]「其の僧等此の事を見て、稍や異(アヤシム)」(出典:天理本金剛般若経集験記平安初期点(850頃))
    2. 「この月ごろ、うちうちにあやしみ思う給ふる人の御事にやとて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)夢浮橋)
    3. 「秦舞陽わなわなとふるひければ、臣下あやしみて」(出典:平家物語(13C前)五)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 マ行下二段活用 〙
    1. 態度などにはっきりしない点があって変だと思う。変だと思ってとがめだてをする。
      1. [初出の実例]「此勢一所に集らば、人に恠(アヤ)しめらるべしとて」(出典:太平記(14C後)二四)
      2. 「ナニゴト ナレバ、ケシカラヌ サカナダウグノ カイヤウゾト ayaximureba(アヤシムレバ)」(出典:天草本伊曾保(1593)イソポの生涯の事)
    2. 叱ったりしてひどく当たりちらす。
      1. [初出の実例]「我と心腹たててすこしの事に人をあやしめければ」(出典:浮世草子・本朝二十不孝(1686)五)
    3. 相手を卑しいものとして応対する。
      1. [初出の実例]「一旦の栄華に誇って、人をあやしむる事なかれ」(出典:仮名草子・伊曾保物語(1639頃)中)

怪しむの語誌

( 1 )[ 一 ]は「あやしぶ」とともに平安時代初期から使用されているが、院政期頃を境に「あやしむ」が多用されるようになり、「ぶ」と「む」の交替の可能性も考えられる。平安時代にはおもに漢文訓読系の文献で用いられ、和文での使用は稀で「源氏物語」では挙例一例だけである。和文で多用される「あやしがる」と比べて、態度・言動を伴わない内面的な心理作用に用いられることが多い。
( 2 )「文鏡秘府論保延四年点」(一一三八移点)には「アヤシムル」という例がある。[ 二 ]の下二段活用の古い例と見ることもできるが、「あやしむ」にも古く上二段活用があったとも考えられる。→「あやしぶ」の語誌

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