倉田百三の感想論文集。1921年(大正10)岩波書店刊。旧制第一高等学校『校友会雑誌』に発表したものから29歳に至るまでの思索的エッセイ17編を収録してある。肉と煩悩にさいなまれる自己の心情に密着しつつ、善、真理、友情、恋愛、性欲、信仰といった、青春の日に一度は直面する人生上の問題を、誠実に受け止め、探求した求道(ぐどう)の書として、阿部次郎の『三太郎の日記』(1914)とともに、多くの青年に読み継がれた。著者の思想的開眼は、西田幾多郎著の『善の研究』に導かれたものである。
[高橋新太郎]
『『愛と認識との出発』(角川文庫)』▽『折原脩三著『倉田百三の愛と認識の結末』(1969・柏樹社)』
…16年から17年にかけて《白樺》の衛星誌《生命の川》に戯曲《出家とその弟子》を発表,岩波書店より刊行され,広く読まれた。その後《白樺》誌上で活躍,書きためていた評論,感想をまとめて《愛と認識との出発》と題し,21年岩波書店より刊行した。これは阿部次郎の《三太郎の日記》とともに戦前までの旧制高校生の青春必読の書となったもので,愛,友情,信仰,性欲などを通して人生を求道的に考察しようとした内省的エッセーである。…
…倉田の体験した失恋や病気の苦しみの末に作り出されたものである。倉田の評論《愛と認識との出発》(1921)とともに戦前までの旧制高校生などの必読の書でもあった。【紅野 敏郎】。…
※「愛と認識との出発」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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