倉田百三(読み)クラタヒャクゾウ

デジタル大辞泉 「倉田百三」の意味・読み・例文・類語

くらた‐ひゃくぞう〔‐ヒヤクザウ〕【倉田百三】

[1891~1943]劇作家評論家広島の生まれ。西田幾多郎に傾倒し、京都の「一灯園」に入って思索的生活体験。評論集「愛と認識との出発」、戯曲出家とその弟子」「俊寛」「布施太子の入山」など。

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精選版 日本国語大辞典 「倉田百三」の意味・読み・例文・類語

くらた‐ひゃくぞう【倉田百三】

  1. 作家、評論家。広島県出身。第一高等学校中退西田哲学に傾倒し、西田天香の一灯園に入る。のち白樺派に接近。宗教信仰を中心とした求道的な思索に専心し、青年層に共感を与えた。代表作に戯曲「出家とその弟子」「俊寛」、評論集「愛と認識との出発」など。明治二四~昭和一八年(一八九一‐一九四三

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「倉田百三」の意味・わかりやすい解説

倉田百三
くらたひゃくぞう
(1891―1943)

戯曲家、評論家。明治24年2月23日広島県生まれ。1910年(明治43)旧制第一高等学校に入学したが結核で中退。のちカリエスの併発もあって生涯の多くを闘病に過ごした。西田幾多郎の『善の研究』に傾倒、西田天香(てんこう)の一燈園生活も経験。1916年(大正5)から翌年にかけて白樺(しらかば)派の衛星誌『生命の川』に戯曲『出家とその弟子』を連載、1917年単行本となり大きな反響をよんだ。以後『歌はぬ人』『布施太子之入山』などの宗教的倫理的作品を刊行、『父の心配』『赤い霊魂』などには社会的視野の広がりを示し、1926年に『生活者』を創刊、求道的青年の知的連帯の場となった。一方『愛と認識との出発』『静思』『超克』『絶対的生活』『生活と一枚の宗教』などの論集を発刊し、情欲に身を焼く自己を対極として、キリスト教、仏教、神道(しんとう)にも及ぶ求道的遍歴に思想を深め、独自の地歩を固めた。晩年には『祖国への愛と認識』『日本主義文化宣言』などで大乗的生命主義を説き、ファシズム正当化の理論づけを果たした。書簡集『青春の息の痕(あと)』や農本主義青年を主人公とした『浄(きよ)らかな虹(にじ)』などの小説もある。昭和18年2月12日没。

[高橋新太郎]

『『倉田百三選集』全5巻(1953~54・春秋社)』『鈴木範久著『倉田百三――近代日本人と宗教』(1970・大明堂)』

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20世紀日本人名事典 「倉田百三」の解説

倉田 百三
クラタ ヒャクゾウ

大正・昭和期の劇作家,評論家



生年
明治24(1891)年2月23日

没年
昭和18(1943)年2月12日

出生地
広島県三上郡庄原村(現・庄原市)

学歴〔年〕
一高〔大正2年〕中退

経歴
一高在学中に哲学論文を発表していたが、大正2年結核にかかり、療養のため中退する。4年西田天香が主宰する京都の一燈園に入り思索的な生活を続けた。5年「生命の川」を創刊し、戯曲「出家とその弟子」を連載。6年「出家とその弟子」を刊行し、大ベストセラーとなる。10年に刊行した論文・随想集の「愛と認識との出発」は青春の思索書として広く読まれた。13年結婚、同年「超克」では合理主義的な生き方を摸索し、15年雑誌「生活者」を創刊するなど宗教と倫理の問題を追求したが、極度の強迫観念症に陥る。昭和4年回復後は国家主義に傾き、国民協会、新日本文化の会の幹部を務めた。14年大陸旅行中過労から発病。他の主な戯曲に「俊寛」「歌はぬ人」「赤い霊魂」、小説に「親鸞聖人」や自伝「光り合ふいのち」、論集に「静思」「転身」「希臘主義と基督教主義との調和の道」「絶対的生活」など。「倉田百三選集」(全5巻 春秋社)などがある。

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改訂新版 世界大百科事典 「倉田百三」の意味・わかりやすい解説

倉田百三 (くらたひゃくぞう)
生没年:1891-1943(明治24-昭和18)

戯曲家,評論家。広島県生れ。生家の家業は呉服商。三次(みよし)中学を経て一高に入学。西田幾多郎の《善の研究》の影響を受け《一高校友会雑誌》に論文を発表。1913年結核にかかり一高を退学,療養生活ののち西田天香の一灯園に入る。16年から17年にかけて《白樺》の衛星誌《生命の川》に戯曲《出家とその弟子》を発表,岩波書店より刊行され,広く読まれた。その後《白樺》誌上で活躍,書きためていた評論,感想をまとめて《愛と認識との出発》と題し,21年岩波書店より刊行した。これは阿部次郎の《三太郎の日記》とともに戦前までの旧制高校生の青春必読の書となったもので,愛,友情,信仰,性欲などを通して人生を求道的に考察しようとした内省的エッセーである。《白樺》の後身《不二》を経て26年から《生活者》を主宰,倉田を慕う若い人々が集まった。満州事変前後より右傾,ファッショ的発言が多くなった。一高時代の友人にあてて書いた書簡集《青春の息の痕》(1938)も青春告白の書である。
執筆者:

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「倉田百三」の意味・わかりやすい解説

倉田百三
くらたひゃくぞう

[生]1891.2.23. 広島,庄原
[没]1943.2.12. 東京
劇作家,評論家。病のため第一高等学校を中退 (1913) ,帰郷してキリスト教を中心とする思索生活に入った。 1916~17年『白樺』の衛星誌『生命の川』に戯曲『出家とその弟子』を連載,一躍有名作家となって,大正期宗教文学ブームの先駆をなした。ほかに絶望的な人間関係を描いた『俊寛』 (20) ,煩悩を断ち切る宗教劇『布施太子の入山』 (21) などがある。一方,一高時代から西田幾多郎に傾倒し,その影響を受けて 30歳くらいまでに書き集めた随筆『愛と認識との出発』 (21) は作者自身の「青春の記念碑」であり,広く青年たちの愛読書となった。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「倉田百三」の解説

倉田百三 くらた-ひゃくぞう

1891-1943 大正-昭和時代前期の劇作家,評論家。
明治24年2月23日生まれ。一高在学中に西田幾多郎(きたろう)の影響をうける。大正6年戯曲「出家とその弟子」を刊行し,反響をよぶ。10年評論集「愛と認識との出発」を発表,当時の青年の必読書となる。15年「生活者」を創刊,主宰。晩年は国家主義にかたむいた。昭和18年2月12日死去。53歳。広島県出身。
【格言など】純な青年時代を過さない人は深い老年期を持つ事も出来ないのだ(「出家とその弟子」)

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「倉田百三」の解説

倉田百三
くらたひゃくぞう

1891.2.23~1943.2.12

大正・昭和前期の劇作家・評論家。広島県出身。一高中退。在学中西田幾多郎(きたろう)の影響をうける。結核を病んだのち宗教的思索に没頭し,西田天香(てんこう)の一灯園に入る。1917年(大正6)に刊行された戯曲「出家とその弟子」は大正期宗教文学の代表作。21年の論集「愛と認識との出発」は青春教養書として読まれた。大正期は白樺派の思想・作風に接近。26年(昭和元)「生活者」創刊。のち日本主義に傾き国民協会などの幹部となる。

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百科事典マイペディア 「倉田百三」の意味・わかりやすい解説

倉田百三【くらたひゃくぞう】

劇作家,評論家。広島県生れ。肺を病んで一高中退。1916年から1917年にかけて《白樺》(白樺派)の衛星誌《生命の川》に戯曲《出家とその弟子》を発表,続く《俊寛》《布施太子の入山》などで大正期宗教文学の代表的作家となった。評論集《愛と認識との出発》(1921年)は広く読まれた。晩年は国家主義に傾いた。

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旺文社日本史事典 三訂版 「倉田百三」の解説

倉田百三
くらたひゃくぞう

1891〜1943
大正・昭和期の劇作家・評論家
広島県の生まれ。一高在学中西田幾多郎 (きたろう) の哲学に傾倒,以後病の中で思索生活を続けた。戯曲『出家とその弟子』,評論集『愛と認識との出発』は青年層にながく影響を与えた。

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367日誕生日大事典 「倉田百三」の解説

倉田 百三 (くらた ひゃくぞう)

生年月日:1891年2月23日
大正時代;昭和時代の劇作家;評論家
1943年没

出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の倉田百三の言及

【出家とその弟子】より

倉田百三の戯曲。1916年(大正5)より17年にかけて《白樺》衛星誌の一つでもあった《生命の川》に発表。…

※「倉田百三」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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