戸ノ口堰(読み)とのくちぜき

日本歴史地名大系 「戸ノ口堰」の解説

戸ノ口堰
とのくちぜき

猪苗代湖の水を十六橋じゆうろくきよう左岸の戸ノ口で取水し、会津若松市内を流れ、流末は湯川ゆがわ村に至る。当町の一部と会津若松市の灌漑用水・戸ノ口水力発電用水および会津若松市の上水道に利用される用水堰。元和九年(一六二三)蒲生忠郷が着工したが、将軍の上京供奉のため藩財政が逼迫し工事中止。寛永五年(一六二八)代田組八田野はつたの肝煎私財を投じ、役夫二万余人を動員して継続したが、蟻塚ぎづかに至って財力が尽き挫折する(八田家十八代の事蹟)。同九年藩主加藤明成が工事再開、同一三年八田野村までの通水に成功し、八田野堰と名付けた。明暦三年(一六五七)代田組槻橋つきのきばし村の花積弥市は八田野堰の終末なべ沼から下居合しもいあわせ山の長原ながはらまで通水して長原新田村(現会津若松市)を開いた。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「戸ノ口堰」の意味・わかりやすい解説

戸ノ口堰
とのくちぜき

福島県の猪苗代湖(いなわしろこ)北西岸の戸ノ口(会津若松市)、十六橋水門南側から会津盆地に水を引く堰。全長31キロメートル。1628年(寛永5)八田野(はったの)村の肝煎(きもいり)(名主)が私財を投じて着工したが中止。1636年に会津藩により八田野一帯が灌漑(かんがい)され、1693年(元禄6)には若松城下まで通じた。取水量は灌漑期(5~9月)には毎秒3.858立方メートル、灌漑面積は1865ヘクタールに及ぶ。発電用、上水道にも利用される。

[安田初雄]

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