福島県のほぼ中央部に位置し、磐梯山(一八一八・六メートル)の南麓にあり、面積は一〇三・三平方キロで、この面積は周辺の市町村には含まれず、県全体の面積には加えられる。周囲は「理科年表」によれば約六三キロ、「福島県史」では四九キロとなっている。湖の周囲は北と東が耶麻郡猪苗代町、西は会津若松市、東と南は郡山市で、湖岸の市町別長さの割合は約四一、三一、二八の百分比に相当する。湖の平面形は卵のような長円形をなし、東西約一〇キロ・南北約一四キロで、湖面の標高は五一四メートルである。湖の深さは湖心からやや西に九四・六メートルの最深点がある。平均深度は五一・五メートルで、湖の北部、
湖名の起源については未詳だが、岩手県の岩手山の火口内にある湖は
古くから湖の成因については、磐梯町
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
福島県のほぼ中央部,耶麻郡猪苗代町,会津若松市,郡山市の境界にあり,面積103.9km2で日本第4位の湖。磐梯朝日国立公園の一部をなす。周囲49km,南北約13km,東西最大11kmの卵形の輪郭をもち,水面標高514m,最大深度93.5m,酸栄養湖である。湖盆の形態は,湖岸部に緩やかな傾斜を有する湖棚があり,特に長瀬川河口から長浜の間では深さ5m以下,幅1~2kmの浅い湖棚が続き,湖の中央はそれより急に深くなっているが,水深80m以深は平たんで湖底平野状をなしている。湖の東側には南北に続く川桁(かわげた)断層によって境された川桁山地,額取(ひたいどり)山地,西側には背あぶり高原とそれに続く丘陵,南部には会津布引山から続く山地,北部には湖北平野とその北にそびえる磐梯山,北西部には翁島(おきなじま)泥流丘陵がある。流入河川は,裏磐梯から流下し湖北に三角州をつくる最大の長瀬川,南部の舟津川,菅川,常夏(とこなつ)川,西部の原川などである。湖の水は,北西部戸ノ口より日橋(につぱし)川となって流出し,只見川と合流して阿賀川,阿賀野川となって日本海に注ぐ。湖北の西部や湖南に流入する河川沿岸にみられる段丘地形,西部にある標高520mの赤井谷地,および湖盆形態やその他の周辺部の地形,地質などから,湖の形成は,おおよそ川桁断層の活動による断層角盆地の生成,盆地内での火山噴出(磐梯山の形成)によるせき止めの結果初期猪苗代湖の形成,翁島泥流の押出しによる湖面の上昇と湖の拡大,日橋川への流出とその下方浸食による湖面の低下および長瀬川などの堆積の進行による湖の縮小という過程を経たと推定される。
強酸性の酸(す)川を支流にもつ長瀬川が流入するため,湖の水はpH4~5と酸性を示し,湖にすむ生物相も限られており,魚類もウグイやフナ程度である。北岸の浅瀬にはミズスギゴケの群落がみられ,水流作用でまり状にかたまる特徴があるので〈マリゴケ〉ともいわれるが,近年は少なくなった。また北岸の白鳥浜や西岸の崎川浜(さつかはま)には冬期間ハクチョウ類が多数渡来する。ミズスギゴケ群落と白鳥浜一帯および赤井谷地沼野植物群落は天然記念物となっている。
湖の水は,古くから戸ノ口堰,布藤堰により会津盆地の灌漑に利用されていたが,1882年安積(あさか)疎水が開削されて,郡山盆地にも引水され,その後の新安積疎水なども含めて,現在1万ha以上の水田をうるおしている。また会津盆地や郡山盆地との約300mの落差を利用して,日橋川,戸ノ口堰,安積疎水の各水系に計12の発電所が設けられ,総計約19万kW(1997)の電力を発電している。湖の定水位は標高514.2mとされており,1941年以降新たに水門を戸ノ口南部に設け,非灌漑期には定水位以下3.27mまで湖面を低下しうるようにし,その結果湖の有効貯水量は約3.3億m3となった。湖水は,郡山市や会津若松市の飲料水,工業用水にも利用されている。また長浜や志田浜を中心として,夏は湖水浴やヨット,遊覧船などでにぎわう。北岸には猪苗代町の水田地帯がひろがり,磐越西線,越後街道(国道49号線),磐越自動車道が通じる。南岸の茨城街道沿いには,原(会津若松市),赤津・福良・中野(いずれも郡山市)など典型的な街村が多くみられる。
執筆者:大澤 貞一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
福島県のほぼ中央にある湖。湖岸の北と東は猪苗代町、南は郡山市(こおりやまし)、西は会津若松市に含まれる。南北14キロメートル、東西10キロメートルほどの卵形の輪郭をもち、面積103.32平方キロメートル(全国第4位)、湖面高度514メートル、最大深度93.5メートル、湖岸線の長さは49キロメートルである。湖盆の形成史は単純ではなく、第三紀末から第四紀初めころの地殻運動(東縁を限る川桁(かわげた)断層の活動)に始まり、断層角盆地の生成を端緒とする。南西縁での会津布引山(ぬのびきやま)溶結凝灰岩層の堆積(たいせき)、北縁での猫魔ヶ岳(ねこまがだけ)、磐梯山(ばんだいさん)の形成などと並行して、この付近に現湖水面より60メートルほど低い位置に原猪苗代湖ともいうべき湖水が誕生した。その後、湖盆北西部に翁島泥流(おきなじまでいりゅう)の押し出しと堰(せ)き止めが行われ、湖面は急速に上昇してほぼ530メートルに達し、同時に面積も現湖水面よりも広いものとなった(古猪苗代湖。約2万年前)。この時期、現在の赤井谷地(あかいやち)、原(はら)付近、湖北平野の大部分、湖東、湖南の低地などが湖面下にあって、湖岸線は屈曲の多いリアスの特色を示していた。その後、排水河川の日橋川(にっぱしがわ)の侵食復活によって湖面が徐々に低下して現在の高度になった。
湖岸付近の状況を地誌的にみると、まず北岸には、上流から砂礫(されき)を運び出す長瀬川(ながせがわ)がデルタを形成する。その一部が天神浜(てんじんはま)湖水浴場である。その他の部分は浅い泥質の湖岸で、冬季ハクチョウが飛来する。西岸には、長浜、翁島、十六橋(じゅうろっきょう)、銀の浜、崎川浜(さっかはま)などの観光スポットや、猪苗代湖の水を利用する発電用取水口、戊辰(ぼしん)戦争の戸ノ口原古戦場などがあり、国道49号が湖岸を4キロメートルにわたって走っている。南岸には常夏(とこなつ)川、菅(すが)川、舟津(ふなづ)川の河口付近に砂浜を伴う小平野が広がる一方、鬼沼の砂嘴(さし)、屏風(びょうぶ)岩の湖食洞、立石(たていし)の柱状節理などの自然景観がある。東岸北端の上戸(じょうこ)には安積疏水(あさかそすい)の取入口、旧疏水路、志田浜湖水浴場などがある。弱酸性湖なので魚種はあまり多くない。
[中村嘉男]
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出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報
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