改訂新版 世界大百科事典 「戻し税制度」の意味・わかりやすい解説
戻し税制度 (もどしぜいせいど)
関税もしくは内国消費税の払戻しに関する制度をいう。関税についていえば,関税納付済みの輸入貨物が一定の要件を充足したとき,納付済み関税の全部もしくは一部が払い戻される。輸出ないし再輸出の奨励のため製造用原料品に適用されることが多い。クレームが成立すると輸入貨物は違約品として相手方に返送されるか,それとも廃棄されるが,その場合にも関税の払戻しが行われる。関税ないし内国消費税が商品に課され,その商品が国内で販売されたとすると,関税または内国消費税は,消費者に転嫁されることになるが,この商品が輸出されたとすると,それが独占的な商品である場合を除いては外国消費者に転嫁することは難しい。輸出商品に関税なり内国消費税が課されると,その転嫁の困難のゆえに,輸出する者の国際競争力を不利な立場に置くこととなり,それだけ輸出条件は阻害されることとなる。だからといって,輸出商品に最初から関税または内国消費税を減免することは,徴税技術からみて困難である。生産者なり商人が製品または商品を国内,国外のいずれで販売するかは,本来自由であるはずだが,国際競争における不利な地位を除くためには,輸出商品につき,すでに納付済みの関税なり,内国消費税を払い戻す必要がある。これと類似の制度として保税制度があるが,これが関税についてのみ適用され,しかも保税地域を経由した輸入商品等にだけ限られるのに対し,戻し税制度は,関税のほか,消費税にも適用される点で異なる。
なお,所得税減税の際にも源泉徴収分の払戻しが行われることがあり,これも戻し税と呼ばれるが,これは免税の一種と解することもできる(これについては〈減税〉の項参照)。
執筆者:村井 正
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報