保税制度(読み)ホゼイセイド(その他表記)bonded system

デジタル大辞泉 「保税制度」の意味・読み・例文・類語

ほぜい‐せいど【保税制度】

外国貨物保税のままで運搬蔵置ぞうち加工展示などができる制度

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精選版 日本国語大辞典 「保税制度」の意味・読み・例文・類語

ほぜい‐せいど【保税制度】

  1. 〘 名詞 〙 輸入した商品が保税地域に置かれている間は輸入関税の賦課を猶予する制度。加工貿易中継貿易を促進するために設けたもの。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「保税制度」の意味・わかりやすい解説

保税制度
ほぜいせいど
bonded system

外国から輸入する貨物に課せられる関税の取り立てを留保する関税法上の制度。保税地域制度と保税運送制度とがある。前者は、税関への手続の円滑化、中継(なかつぎ)貿易や加工貿易などの振興のために設けられたものである。後者は、保税地域間など特定の場所との間を保税状態のままで運送できる制度であり、主として保税地域の利用拡大のために設けられたものである。

 保税地域は保税を認められた場所であり、この地域では外国貨物を関税未納の状態で、蔵置や加工および展示などをすることができる。その種類は国によって相違するが、わが国では、(1)指定保税地域、(2)保税上屋(うわや)、(3)保税倉庫、(4)保税工場、(5)保税展示場、の5種類に区分されている。(1)と(2)は一時蔵置、(3)は長期蔵置、(4)は加工、(5)は展示の機能をもっている。保税地域の設置については、(1)は財務大臣の指定、その他は税関長の許可が必要である。

 (1)と(2)は外国貨物の税関手続、とくに荷さばきを迅速に処理するために設けられた地域であるが、(1)の地域の対象となるのが公有の土地・建物であるのに対して、(2)の地域の対象となるのは私有の土地・建物である点が相違している。(2)は公共的な施設である(1)を補完する役割を果たしている。(1)と(2)は荷さばきのための一時(ともに原則として1か月)蔵置としての機能を果たす必要から、ともに税関所在地の港や空港の近くに設置されている。

 (3)は外国貨物を関税未納のままで長期にわたり蔵置しうる場所として許可された保税地域であり、中継貿易を振興する目的のために設けられたものである。長期蔵置(最長2年間)としての機能をもっているため、輸入業者または貨物の所有者は、その間、もっとも有利とするときに商取引を行うことができる。(4)は保税作業(関税未納のままで外国貨物の加工、またはこれを原料とする製造など)ができる場所として民間企業の工場などに対して許可された保税地域である。加工貿易を振興するために設けられたもので、保税作業のできる期間は原則として2年間であるが、作業の都合によっては期間を延長しうる。

 (5)は関税未納の状態で外国貨物の展示、施設の建設、使用などのできる場所として許可された保税地域である。この制度は、1970年(昭和45)の大阪での万国博覧会開催に備えて1967年につくられたものであり、国際的な規模で開催される博覧会や、公的機関が主催する展示会、見本市などを円滑に行うことを目的としている。

[田中喜助]

『藤田一夫著『保税の話題』(1982・日本関税協会)』『松尾良彦著『税関――その仕組と役割』(教育社・入門新書)』

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改訂新版 世界大百科事典 「保税制度」の意味・わかりやすい解説

保税制度 (ほぜいせいど)
bonded system

外国の貨物を国内に持ち込む場合には,それが無税品でないかぎり関税を支払わなければならない。しかし,保税地域bonded areaと呼ばれる特定の場所・地域においては,外国貨物を輸入手続未済のままで一定期間保管・展示したり,あるいはそれを用いて加工・製造を行うことができ,その期間中関税の徴収が一時留保される。さらに,保税地域の利用に一層の便宜を図るため,関税徴収留保のままで,保税地域間の運送を許可するという制度もある。こうした関税徴収を一時留保し,保管,展示,加工,製造,運送などを行いうる制度を保税制度という。

 日本では,指定保税地域,保税上屋,保税倉庫,保税工場,保税展示場が保税地域として認められている。指定保税地域と保税上屋は,ごく短期的な蔵置の場所であり,輸出入の通関手続等を迅速かつ簡便に行うために設けられる。したがって,貿易面で積極的な政策意図をもつものではない。これに対して,保税倉庫や保税工場は,貿易政策上積極的な意義をもっている。保税倉庫とは,関税徴収を留保したまま,長い期間(日本では2年間)外国貨物を蔵置しておける場所のことである。その主眼は,費用節約のため大量に輸送した外国貨物を関税留保のまま保管し,内外の需給に応じての外国への積戻しや国内への輸入を容易にすることにある。積戻しする場合には,いったん関税を支払いそれを再び払い戻す等の手続を必要としないですみ,国内へ供給する場合には,その時点で関税を支払えばよいので金利負担が軽減される等のメリットがある。また,保税倉庫に倉入れしたままで貨物を売買することもでき,輸送費用等を節約できる。この結果,貿易取引の円滑化が進み中継貿易が促進される。一方,保税工場では関税徴収を留保したままで,外国貨物の加工やそれを原材料とする製造を行うことができる。加工・製造された製品が外国へ輸出される場合には,原材料に対する輸入関税は免除され,国内に供給される場合には製品に対してでなく,原材料に対して輸入関税が課せられる。この制度を活用すれば,輸入原材料の関税負担が軽減されるため,加工貿易を活発化させる効果がある。このように保税制度には,貿易取引を円滑化し,中継貿易,加工貿易を促進することが期待されている。この効果の一層の拡大を狙いとした制度として自由港がある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「保税制度」の意味・わかりやすい解説

保税制度
ほぜいせいど
bonded system

外国貨物に対する関税の徴収を一定期間猶予する制度。この制度が適用される国内の一定地域を保税地域といい,そこから再輸出される外国貨物は関税が免除される。保税制度の目的は,輸入貨物の積卸しや検査,輸入手続など税関手続を簡易迅速に行うほか,保税倉庫や保税工場を設けることによって中継貿易加工貿易を促進することにある。日本でもこの制度が採用され,指定保税地域,保税上屋,保税倉庫,保税工場,保税展示場が設けられている。

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世界大百科事典(旧版)内の保税制度の言及

【戻し税制度】より

…生産者なり商人が製品または商品を国内,国外のいずれで販売するかは,本来自由であるはずだが,国際競争における不利な地位を除くためには,輸出商品につき,すでに納付済みの関税なり,内国消費税を払い戻す必要がある。これと類似の制度として保税制度があるが,これが関税についてのみ適用され,しかも保税地域を経由した輸入商品等にだけ限られるのに対し,戻し税制度は,関税のほか,消費税にも適用される点で異なる。 なお,所得税減税の際にも源泉徴収分の払戻しが行われることがあり,これも戻し税と呼ばれるが,これは免税の一種と解することもできる(これについては〈減税〉の項参照)。…

※「保税制度」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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