六訂版 家庭医学大全科 「手指関節靭帯損傷」の解説
手指関節靭帯損傷
しゅしかんせつじんたいそんしょう
Ligament injury in the finger joint
(運動器系の病気(外傷を含む))
どんな外傷か
手指の関節の両側には、関節の側方への動揺性を制御している(横方向へ曲がらないようにしている)
見落としやすい外傷と合併症
専門的には、突き指という診断名はありません。突き指には、靭帯損傷、骨折、脱臼、腱断裂などの病態があります。突き指だと自己判断してしまう患者さんが多いので、注意が必要です。
症状の現れ方
受傷直後から手指に疼痛、はれが生じます。手指を動かすと痛いので、十分に曲げたり伸ばしたりすることができなくなります。
検査と診断
強い圧痛(押すと痛むこと)が関節の片側(損傷側)だけに限局してあり、損傷側と反対側へ曲げる力をかけると疼痛が強くなります。靭帯が完全断裂している場合には、側方への不安定性(靭帯が断裂している側と反対側への動きが大きくなる)が認められます。
X線写真では、靭帯が骨に付着していた部分がはがれた
治療の方法
不安定性が強くない場合は、2~4週間外固定を行い、その後、徐々に動かす練習を始めます。X線検査で異常がない場合でも、一定期間の外固定は必要です。不安定性が強い場合は、手術が必要となります。
とくに、母指MP関節尺側側副靭帯損傷では、靭帯の断端が反転して、母指内転筋腱膜の下にはさまるステナー障害と呼ばれる治癒不能の状態があるので、手術が必要です(図34)。受傷後早期の場合は、靭帯縫合術を行います。完全断裂で3週間以上放置した場合は、断端同士を縫合することが困難で、再建術が必要になる場合があります。
外傷を負ったら
関節を動かないように固定すると、疼痛が緩和されます。早期に整形外科を受診することをすすめます。
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報