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批判的リアリズム ひはんてきリアリズム

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

批判的リアリズム
ひはんてきリアリズム

ゴーリキーが社会主義リアリズムの対概念として初めて用いた言葉。近代市民社会の成立,自然科学,社会科学の発展を背景としたリアリズムの流れのなかにあるが,フローベールのように客観的,中立的ではなく,「世界の良心」と呼ばれるトルストイのそれのように倫理的であり,個人の直観によって現実の否定面を批判的にえぐる形をとる。 20世紀の文学では,たとえばイギリスの詩人 W.オーウェンの戦争風刺の詩などがそれで,その個人性,恣意性を歴史的,政治的な立場から批判した『破壊的要素』における S.スペンダーは社会主義リアリズムの例となる。これは歴史的には,封建的な資本主義的社会の欠陥や矛盾をつくものとなり,特に 19世紀のロシアで顕著にみられ,プーシキンからドストエフスキー,トルストイらを経てゴーリキーに究極するが,フランスのスタンダール,バルザック,イギリスのディケンズ,ゴールズワージー,アメリカのマーク・トウェーンらもこれに入り,日本でも二葉亭四迷の『浮雲』,島崎藤村の『破戒』,長塚節の『土』,夏目漱石の『明暗』などがあげられよう。社会主義リアリズムのなかに統合される面が多分にあるが,これで処理しきれない面が常に残るところに問題点がある。

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百科事典マイペディアの解説

批判的リアリズム【ひはんてきリアリズム】

主に旧ソ連で用いられた,マルクス主義的文学理論の一概念。プロレタリア革命に先立って,国民生活の暗部や矛盾を批判的に描き出した,19世紀ロシアなどの古典作家の創造原則をさす。

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世界大百科事典 第2版の解説

ひはんてきリアリズム【批判的リアリズム kriticheskii realizm[ロシア]】

1930年代初め,ソ連邦での社会主義リアリズム論の台頭とともに,その対概念としてゴーリキーらによって使われはじめた文芸用語。広義には19~20世紀の写実主義文学全般について用いられ,ディケンズ,バルザック,フローベール,マーク・トウェーン,ドライサーらの文学が社会の矛盾をつき,現実批判の機能を果たしたことが強調された。しかし,批判的リアリズムを方法的自覚にまで高めたのは19世紀ロシア文学であった。そこではゴーゴリツルゲーネフゴンチャロフ,トルストイ,チェーホフらの文学が,専制政治と農奴制ロシアの否定面をあばいて体制への抗議を呼びさまし,〈余計者〉という独自の文学的形象を生み出した。

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世界大百科事典内の批判的リアリズムの言及

【社会主義リアリズム】より

…同規約では,〈社会主義リアリズム〉とは,〈現実をその革命的発展において,真実に,歴史的具体性をもって描く〉方法であり,その際,〈現実の芸術的描写の真実さと歴史的具体性とは,勤労者を社会主義の精神において思想的に改造し教育する課題と結びつかなければならない〉とされた。この定式は,1932年4月,文学団体再編成についての共産党中央委員会決議後,作家同盟準備委員会でのゴーリキー,ルナチャルスキー,キルポーチンValerii Yakovlevich Kirpotin(1898‐1980),ファジェーエフらの討論を経てまとめられたもので,討論の過程では,社会主義リアリズムとは,〈社会主義が現実化した時代のリアリズムである〉,〈19世紀ロシア文学の方法とされた“批判的リアリズム”が,現実の欠陥,矛盾をあばきながら,その批判を未来への明るい展望と結びつけられなかったのとは異なり,革命的に発展する現実そのものの中に未来社会への歴史的必然性を見いだす新しい質のリアリズムである〉,その意味でこれは〈革命的ロマンティシズムをも内包する〉と強調された。実作面でこの方法に道を開いた作品としては,ゴーリキーの諸作品,とくに《母》(1906),ファジェーエフの《壊滅》(1927),N.A.オストロフスキーの《鋼鉄はいかに鍛えられたか》(1932‐34)などが挙げられた。…

※「批判的リアリズム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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