スペンダー(読み)すぺんだー(英語表記)Sir Stephen Harold Spender

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スペンダー」の意味・わかりやすい解説

スペンダー
Spender, Stephen (Harold)

[生]1909.2.28. ロンドン
[没]1995.7.16. ロンドン
イギリスの詩人,批評家。いわゆるオーデン・グループの一人。オーデンデイルイスとの交友はオックスフォード大学時代からで,その間の事情は自伝『世界のうちなる世界』 World Within World (1951) に詳しい。処女詩集 Poems (33) ,長詩『ウィーンVienna (34) ,詩劇『裁判官の審問』 Trial of a Judge (38) ,評論集『破壊的要素』 The Destructive Element (35) ,『自由主義からの前進』 Forward from Liberalism (37) などには強い政治的関心がみられるが,スペイン内乱に参加した経験から,次第に政治から遠ざかり,「夢をはらむ単独者」としての理念抒情性がその著作の原動力となった。全詩集 (54) のほか詩劇,小説旅行記もあるが,『創造的要素』 The Creative Element (53) ,『現代人戦い』 The Struggle of the Modern (63) などの評論集が特に重要である。また有力な雑誌ホライズン』 (39~41) ,『エンカウンター』 (53~67) の編集者としても知られる。第2次世界大戦後アメリカの諸大学で講義,来日したこともある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「スペンダー」の意味・わかりやすい解説

スペンダー
すぺんだー
Sir Stephen Harold Spender
(1909―1995)

イギリスの詩人、批評家。母方にドイツ系ユダヤ人の血をひく。オックスフォード大学在学中にオーデン、マクニース、デイ・ルイスらの「オーデン・グループ」の若い詩人たちと親交を結び、一時共産党にも入る。また、当時の代表的な詩誌『新しい詩』『新領土』『新署名』などに寄稿、1930年代の政治的な詩の風土の形成に寄与した。好んで機械を題材に取り上げたが、むしろ叙情的で柔らかな感性が特徴で、政治が主題の場合も、マルクス主義的であるより、虐げられた者への憐(あわれ)みが中心になっている。『20編の詩』(1930)、『詩集』(1933)、長詩『ウィーン』(1934)が初期の代表作。スペイン戦争参加を機に政治的なものに幻滅し、詩風は内面的になっていった。『静かな中心』(1939)はその転回点を明確に示す。リルケを翻訳、影響を受けたとされるが、リルケのもつ硬質な存在への問いかけはなく、ロマン派風に和らげられている。『全詩集』(1985)のほか、『破壊的要素』(1935)、『創造的要素』(1952)、『エリオット伝』(1975)などがある。95年7月16日没。

[出淵 博]

『徳永暢三訳『スペンダー全詩集』(1967・思潮社)』

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