いけ花様式の一つ。一般には一定の形式にとらわれないで、自然の姿をそのままに生かしていけるいけ花をいう。いけ花の発生当時からあり、当初は、たてはな、立花(りっか)における真(しん)の枝が「立てる」形なのに対して、これを「投げる」ところから投入れとよばれた。投げるとは横へ枝を長く出す意味で、『仙伝抄(せんでんしょう)』に「なげ入といふは、船などにいけたるはなのことなり」とあるように、釣り舟に代表される枝を流していける形式のものであった。その後、投入れは茶花(ちゃばな)のなかに取り入れられ盛行するようになった。ここでの投入れは自由で形式をもたぬいけ花と考えられるようになり、17世紀以後から茶の湯を離れ、抛入花(なげいればな)として自立するに至った。これを反映し1684年(貞享1)の『抛入花伝書』をはじめとする伝書が盛んに出版され、形式よりも風情を尊ぶ日常的な手軽な花としての流行をみた。しかし投入れ花は床の間の花として「法がない」という非難とともに床の花にふさわしい形式が求められるようになって生花(せいか)の誕生をみた。こうして投入れ花は生花様式のうちに発展解消したものの、手軽な日常の花として、依然として人々に親しまれ続け、同時にその自由な表現は、いけ花の定形化、硬直化への反発として作用し、絶えず新しいいけ花を生む契機としての役割を果たしてきた。明治期以後の盛(も)り花、投入れの誕生、さらには自由花といった近代いけ花の発展には、投入れのもつ自由性が絶えず働きかけているのをみる。
[北條明直]
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