生け花(読み)いけばな

精選版 日本国語大辞典 「生け花」の意味・読み・例文・類語

いけ‐ばな【生花・活花】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「いけ」は、生かしておく意の「いける」の連用形から ) 木の枝や草花などを切りとり、枝葉の形をととのえて、花器にさすこと。また、さしたものや、その技術、方式。華道(かどう)
    1. [初出の実例]「つりくゎびんのこと〈略〉時のちゃはんの物をつり花びんと用たつること有ども、花はいけばなともいふ」(出典:仙伝抄(1445))

生け花の語誌

( 1 )仏に花を供えることはすでに奈良時代に行なわれ、また、切り取った花や木を器に飾る描写が平安時代の文献に見られる。それが貴族の遊びとして一つの芸道に高められたのは室町時代のことである。
( 2 )立花(たてばな・りっか)」や「投入(なげいれ)」などとならぶ一つの法式として「いけばな」といわれる場合もあるが、現在では、それらの総称として用いられることが多い。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「生け花」の意味・わかりやすい解説

生け花
いけばな

花 (華) 道。日本特有の伝統芸術で草花などを材料として芸術的に生けること,またはその技術。寺院の仏前の供花 (くげ) ,荘厳などの宗教的行事に始り,草花そのものを観賞する挿花 (そうか) などから,室町時代になって流行した七夕花瓶合 (かへいあわせ) ,座敷飾などの室内装飾とともに草花の飾り方に技巧と工夫が凝らされ,ついに挿花作品の観賞を目的とするものに発展した。室町幕府同朋,僧侶らの間に多くの名手が出て,立阿弥 (りゅうあみ) ,相阿弥,文阿弥などの同朋衆や,なかでも後世の生け花発展の基礎となった池坊の僧専慶の活躍が注目される (→池坊 ) 。次いで池坊専応,専栄の代には伝書もでき,江戸時代初期には2代専好が出て立華様式を確立し画期的発展をとげた。やがて『替花伝秘書』『立花秘伝書』などの伝書が刊行されて一般化した。一方,これと並び抛入花 (なげいればな) も普及。江戸時代中期には生花 (せいか,しょうか) が生れ古流,遠州流,宏道流,松月堂古流,石州流,相阿弥流などの流派が次々に現れ,やがて家元制度が確立した。天・地・人や真・行・草など三角形の花型が考案され,江戸時代末には未生 (みしょう) 流も現れた。明治末期,大正には小原流盛花 (もりばな) ,室内装飾を重視した安達式挿花なども現れ,清雅をねらった文人生 (ぶんじんいけ) も盛んとなった。今日では立華,生花,盛花,瓶華現代華など多彩である。なお洋風手法のフラワー・デザインは別種のもので,生け花には加えない。

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