抗凝血剤(読み)コウギョウケツザイ

病院でもらった薬がわかる 薬の手引き 電子改訂版 「抗凝血剤」の解説

抗凝血剤

製品名
《アピキサバン製剤》
エリキュース(ファイザーブリストル・マイヤーズスクイブ)
《エドキサバントシル酸塩水和物製剤》
リクシアナ(第一三共)
リクシアナOD(第一三共)
《ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩製剤》
プラザキサ(日本ベーリンガーインゲルハイム
《リバーロキサバン製剤》
イグザレルト(バイエル薬品
《ワルファリンカリウム製剤》
ワーファリンエーザイ
ワルファリンK(武田テバファーマ、武田薬品工業、東和薬品、ニプロ、富士製薬工業、陽進堂)

 血液を固まりにくくする作用(血液凝固阻止作用)が強力で、いろいろな血栓症けっせんしょうの予防と治療に使います。効果が持続する時間は長いのですが(5~6日)、服用してから効果が現れるまでにふつう12~36時間かかります。肺塞栓症はいそくせんしょう静脈塞栓症心筋梗塞しんきんこうそく脳血栓のうけっせんなどの血栓塞栓症の予防と治療に用います。エドキサバントシル酸塩水和物製剤は、下肢整形外科手術後(膝関節全置換術、股関節全置換術、股関節骨折手術)の静脈血栓塞栓症の発症抑制に用います。


出血しやすくなったり、いちど出血をおこすと止まりにくくなる傾向があります。服用中は次の注意を守ってください。


・けがをしないように注意してください。


・ひげそりは肌を切らないように気をつけましょう。電気かみそりのほうが安全です。


・乱暴に歯をみがいて歯肉から出血させるといったことがないように注意してください。


②過敏症状(じんましん・皮膚炎・発熱などのアレルギー症状)、出血(臓器内出血、皮下出血など)、肝機能障害がおこることがあります。ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩製剤では、間質性肺炎、アナフィラキシー急性肝不全黄疸おうだんが、ワルファリンカリウム製剤では、皮膚壊死、カルシフィラキシス(有痛性皮膚潰瘍)、黄疸が、アピキサバン製剤では間質性肺疾患が、エドキサバントシル酸塩水和物製剤では、黄疸、間質性肺疾患が、リバーロキサバン製剤では、黄疸、間質性肺疾患、血小板減少がおこることがあります。このような症状がおこったときは服用を止め、すぐ医師に相談してください。


③そのほか下痢吐き気嘔吐おうとなどが現れることがあります。このような症状が現れたら、医師に相談してください。


④脱毛、抗甲状腺こうこうじょうせん作用などがおこることがあるので、医師から指示された検査は必ず受けてください。


⑤歯をみがくたびに出血する、皮膚に傷ができやすい、青あざ(紫斑しはん)ができてなかなか消えない、切り傷からの出血がなかなか止まらない、女性で不正出血がおこる、血尿や血便が出る、喀血かっけつ吐血とけつがおこる、胃・背中・関節に痛みなどの症状が現れたときは、医師の診察を受けてください。


①さまざまな剤型があります。1日の服用回数と服用する時間・1回の服用量については医師の指示をきちんと守り、かってに中止したり、減量・増量しないでください。飲み忘れたときは、そのときに飲んでもかまいませんが、2回分をいちどに飲むことは止めてください。出血しやすくなり、いちど出血すると止まりにくくなります。


②指示された検査(血液検査など)は必ず受けてください。通常、最初の1か月は週1回、それ以降は月1回の割合で検査が指示されます。


③問診の際にあらかじめ、持病・アレルギーなどの体質・現在使用中の薬の有無を医師に報告するとともに、使用前に薬の効果と副作用について医師・薬剤師からよく説明を聞き、注意事項をきちんと守ってください。


④この薬の成分に過敏症がある人、重い肝機能障害・じん機能障害の人、出血のある人は使用できません。


そのほかにワルファリンカリウム製剤では、出血しやすい人、中枢神経系手術または外傷(けが)をして日が経っていない人、骨粗鬆症治療用ビタミンK2、イグラチモド製剤、ミコナゾール剤使用中の人、エドキサバントシル酸塩水和物製剤では、急性細菌性心内膜炎、腎不全、凝血障害を伴う肝疾患、リバーロキサバン製剤では、腎不全、中等度以上の肝機能障害(チャイルド・ピュー分類BまたはC)、凝血障害を伴う肝疾患、HIVプロテアーゼ阻害剤、コビシスタット含有抗HIV剤、アゾール系抗真菌剤を使用中の人、アピキサバン製剤では、重度の腎機能障害または腎不全、血液凝固異常および重要な出血リスクをもつ肝疾患のある人、ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩製剤では、透析中の人を含む高度の腎障害、出血しやすい人、止血障害、出血リスクのある器質的病気、脊椎・硬膜外カテーテル留置および抜去後1時間以内の人、イトラコナゾールの経口剤を使用中の人は使用できません。あらかじめ医師に相談してください。


 肝炎・うっ血性心不全・敗血症・低血圧症・ビタミンK欠乏症などの病気がある人、下痢をしている人、脂肪の吸収不全がある人、アルコール依存症の人やビタミンK剤を服用している人は医師に報告し、使用するときは医師の指示を厳重に守ってください。


ワルファリンカリウム製剤リバーロキサバン製剤では、妊婦・現在妊娠している可能性のある人は使用できません。また、母乳で授乳中の人は使用できないことがあるので、医師に報告してください。


⑥バランスのよい食事を心がけ、食事を減らしたり、偏食しないようにしてください。


⑦ビタミンKは、出血を防止するようにはたらきます。この薬を服用中にビタミンKを多量に摂取すると、血栓が生じやすくなります。ほうれん草などのビタミンKを多量に含んだ野菜、納豆などをたくさんとったり、ビタミンKを含むビタミン剤や骨粗鬆症治療用のビタミンK2(メナテトレノン)製剤を服用しないでください。


 飲酒によって出血がおこりやすくなります。服用中は禁酒を守ってください。


⑧服用を止めても1週間ぐらいは出血しやすい状態が残ります。この期間は服用中と同じ注意を守ってください。


⑨子どもが誤って服用すると、副作用が強く現れます。薬は子どもの手の届かない、また日の当たらない場所に保管してください。


⑩ほかの薬と同時に使用する必要が生じたとき(かぜ薬や胃腸薬・漢方薬であっても)は、必ず医師に相談してください。


 抗ガン剤のカペシタビン製剤との併用で出血をおこすことがあるので、併用するときは血液検査を受けてください。ワルファリンカリウム製剤とイグラチモド製剤やメナテトレノン製剤と、リバーロキサバン製剤とHIVプロテアーゼ阻害剤、コビシスタット含有抗HIV剤、アゾール系抗真菌製剤と、ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩製剤とイトラコナゾール製剤との併用はできません。

出典 病院でもらった薬がわかる 薬の手引き 電子改訂版病院でもらった薬がわかる 薬の手引き 電子改訂版について 情報

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