排卵誘発薬(読み)はいらんゆうはつやく

改訂新版 世界大百科事典 「排卵誘発薬」の意味・わかりやすい解説

排卵誘発薬 (はいらんゆうはつやく)

排卵障害の患者に薬剤を投与して排卵を起こさせることを排卵誘発といい,これに用いられる薬剤を排卵誘発薬という。排卵誘発は産婦人科の日常診療で広く用いられるようになり,不妊症の治療に大きな効果をあげている。排卵誘発には多くの方法があり,エストロゲンプロゲステロンを周期的に投与する方法,エストロゲンを一時的に大量投与する方法など卵巣性ステロイドホルモンを用いる方法が古くからあり,現在でも用いられてはいるが,この方法を用いることは少なくなってきている。排卵誘発薬として現在最も広く用いられているのは,クエン酸クロミフェンclomiphene citrate(商品名クロミッド)に代表される非ステロイド性の抗エストロゲンで,これを,5~10日内服させる方法である。クロミフェンは脳の視床下部,脳下垂体レベルでエストロゲンレセプターと結合し,それがきっかけになって,内服開始してから12日目ころに脳下垂体前葉からゴナドトロピンの大量放出が起きて,排卵が起こるものと考えられている。排卵障害のうちでも無排卵周期症や第一度無月経のような軽度のものには有効であるが,プロゲステロンで消退出血のない第二度無月経の患者には効果が少ない。

 排卵誘発で最も強力な方法はhMG(閉経婦人尿性性腺刺激ホルモンhuman menopausal gonadotropin)を用いる方法である。これは閉経期婦人の尿から精製したもので,主として卵胞刺激ホルモンFSH)作用をもつ薬剤である。これを内診所見,子宮頸管粘液量,血中エストロゲン値などをモニターしながら連日注射し,十分に卵胞が発育したと思われる段階で,hCG(ヒト絨毛(じゆうもう)性性腺刺激ホルモンchorionic gonadotropin,黄体ホルモン作用をもつ)を投与すると排卵が起こる。クロミフェンや,とくにhMGによる排卵誘発の場合にはhMGの作用は強力であり,よく排卵するが,過剰投与すると多胎妊娠,卵巣の腫大などの副作用が起こるので産婦人科の専門医によって行われることが必要である。
無月経
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百科事典マイペディア 「排卵誘発薬」の意味・わかりやすい解説

排卵誘発薬【はいらんゆうはつやく】

卵胞成熟を促進し,排卵を誘発する薬剤。卵胞刺激ホルモン作用をもつものに妊馬血清性ゴナドトロピンと更年婦人尿性ゴナドトロピンがあり,ともに黄体形成ホルモン作用をもつ絨毛(じゅうもう)性ゴナドトロピンを併用する。前者は異種タンパクなので抗体ができれば効果がなくなり,後者は過剰刺激の結果,多排卵を起こし多胎妊娠の可能性がある。ほかに,間脳,脳下垂体系に働きかけ卵胞刺激ホルモン,黄体形成ホルモンの分泌を促進するクロミフェンやシクロフェニルがある。
→関連項目多胎減数中絶手術凍結受精卵

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