掻払(読み)かきはらう

精選版 日本国語大辞典 「掻払」の意味・読み・例文・類語

かき‐はら・う ‥はらふ【掻払】

〘他ワ五(ハ四)〙
① 手や道具などで、とりのぞく。また、(涙などを)払いのける。
※枕(10C終)一四三御前の草のいとしげきを、『などか、かきはらせでこそ』といひつれば」
源氏(1001‐14頃)須磨「涙こぼるるをかきはらひ給へる御手つき」
② (「かき」は接頭語。多く、連用形を副詞的に用いて) 一つも残らないようにする。すっかりなくす。
大和(947‐957頃)一五七「この家にありける物どもを、今の妻(め)のがりかきはらひもて運び行く」
③ 掃いてきれいにする。掃除する。
※宇津保(970‐999頃)祭の使「きたなきところは、かきはらひかきのごはすとてなむ」
④ 勢いよく横に打ち振る。
三四郎(1908)〈夏目漱石〉二「刷毛先で掻(カ)き払(ハラ)った痕の様に、筋違(すぢかひ)に長く浮いてゐる」

かっ‐ぱら・う ‥ぱらふ【掻払】

〘他ワ五(ハ四)〙 (「かっ」は接頭語)
① 横になぎ払う。
日本橋(1914)〈泉鏡花〉四三「向脛を掻払(カッパラ)って、ぎゃっと傾倒(のめ)らしてくれますわ」
すきをねらって、他人品物を盗む。
滑稽本・寒紅丑日待(1816‐26)うれしい事「アニサはゑいところが、かっぱらうが近道
※海に生くる人々(1926)〈葉山嘉樹〉七「いつ主人のものをかっぱらふか油断も隙もありゃしない」

かっ‐ぱらい ‥ぱらひ【掻払】

〘名〙 (「かっ」は接頭語) 人のゆだんやすきをねらって、品物を盗み去ること。また、それをする人。かっさらい。もちにげ。かっぱらえ。
日本下層社会(1899)〈横山源之助〉一「千日前裏なる難波石垣浦の如き万年町浅草町の裏に住めるカッパラヒの者流は群をなして生活す」

かい‐はら・う ‥はらふ【掻払】

〘他ハ四〙 (「かい」は接頭語) 払いのける。すべて取り去ってしまう。
蜻蛉(974頃)中「心つかひし、塵かいはらひ、門もあけたりければ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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