深夜の余剰電力を利用して,下池の水をポンプで上池にくみあげておき,この水をピーク時に下池に落として発電に利用する水力発電の方式。日本では日間,または週間負荷調整が主である。河川流量に制約されず大規模化が容易である,変動負荷・ピーク供給力としてすぐれている,地点選定が比較的自由に行えるなど有利な点もあるが,揚水と発電の効率が相乗されるため総合効率は70%程度でよくない。したがって揚水発電所は短時間のピーク供給力としてkW当り建設費を極力安くすることが必要で,上池あるいは下池として既存の貯水池を利用するなどのくふうを要する。原子力・火力発電所では高効率運転を保つため同一出力運転が望ましいので,これら電源が深夜の余剰電力として揚水動力の供給をまかなうこととなる。揚水発電所の機械形式は次の3種類に分けられる。(1)別置形 発電機とポンプ(電動機)を別々に設けるもの。(2)タンデム形 発電機と電動機を共用した発電電動機に水車とポンプを同一軸上に直結したもの。(3)可逆形 発電電動機のみならずポンプと水車も共用したポンプ水車を使用し,回転方向を変えることによって水車運転,ポンプ運転を同一機械で行うもの。(3)の方式が経済性が高く最近のものはほとんどこの方式である。ポンプ水車にはフランシス形,斜流形およびプロペラ形があり,外観はふつう水車と大差ない。発電電動機も外観はふつう発電機と大差ないが,電動機運転のための相変換や起動電動機方式,半電圧制動巻線起動方式,サイリスター起動方式など各種の起動方式に応じた付属装置が必要になる。また水車運転とポンプ運転で発電電動機の回転速度を変える二速機がある。最近では,揚水運転時の入力調整と,発電運転時の高効率運転を可能にした可変速揚水発電電動機も運転されている。
執筆者:竹之内 達也
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