撥鏤(読み)バチル

世界大百科事典 第2版の解説

ばちる【撥鏤】

象牙を紅,緑,紺などで染め,撥彫(はねぼり)で文様を白く浮き出させたもの。さらに賦彩することもある。《東大寺献物帳》に〈紅牙撥鏤尺〉とあるが《唐六典》には〈鏤牙(るげ)〉とあり,撥鏤はその和称といえる。法隆寺献納宝物の内に舶載の針筒や牙尺が遺り,《玉装箱》の蓋掛りにも応用されている。また興福寺金堂鎮壇具にも〈緑牙撥鏤刀子鞘〉が含まれる。正倉院には撥鏤は多数遺されるが,用途は牙尺,刀子把,琵琶撥,如意柄,筥床脚,棊子等に及ぶ。

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大辞林 第三版の解説

ばちる【撥鏤】

象牙細工の一。青や紅色に染色した象牙の表面を彫り、地色の白を浮き上がらせ、文様を見せるもの。正倉院宝物中に伝わる。中国唐代に盛行。撥ね彫り。

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精選版 日本国語大辞典の解説

ばち‐る【撥鏤】

〘名〙 中国唐代に西方美術の影響をうけて流行した象牙彫刻の技法の一つ。赤・緑・青などに染めた象牙に毛彫りで唐草などの文様を表わしたもの。染色が象牙の内部まで浸透していないので、刻んだ部分だけが白く表われる。正倉院に紅牙撥鏤尺などの遺品がある。撥彫(はねぼり)

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世界大百科事典内の撥鏤の言及

【正倉院】より

…竹では,美しい自然斑のある斑竹を筆などに用いている。このほか特殊なものとして撥鏤(ばちる)がある。表面を薄く染めた象牙に撥彫(はねぼり)し,文様を白く表した華麗なもので,紅牙撥鏤尺,紺牙撥鏤棊子などがある。…

【象牙彫】より

…象牙の原材が収蔵されていることは製品を輸入しただけでなく,日本でも原材を求めてそれに加工したことが知られる。その象牙彫の遺品としては笏や,櫛に製したもの,筆管の装飾に用いたものなどがあるが,注目すべき技法を示すものとしては,紅牙撥鏤(こうげばちる),あるいは緑牙撥鏤と称し,紅あるいは緑に染めた象牙に細密彫刻を施したもので(撥鏤),尺および撥にこの種の遺品がある。またこの時代盛んに行われた木画と称する象篏(ぞうがん)の,細い界線の部分にも象牙が用いられた。…

※「撥鏤」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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