日本大百科全書(ニッポニカ) 「放射能鉱物」の意味・わかりやすい解説
放射能鉱物
ほうしゃのうこうぶつ
radioactive mineral
主成分あるいは副成分、ときに少量成分として放射性元素を含む鉱物の総称。放射性鉱物ともいう。放射性元素としては、おもにウランおよびトリウムで、ときにラジウム(少量成分としてある種の重晶石に存在)が含まれる。実際に天然にはカリウムをはじめいくつかの放射性元素があるが、これらを主成分としていても放射性鉱物としては扱われない。鉱物の系統分類上の区分単位と対比してみると、酸化鉱物、炭酸塩鉱物、硫酸塩鉱物、燐(りん)酸塩・砒(ひ)酸塩・バナジン酸塩鉱物、珪(けい)酸塩鉱物に知られ、元素鉱物、硫化鉱物、ハロゲン化鉱物、有機鉱物以外の区分単位に含まれる。
これらのなかでウランは四価・五価・六価および八価の状態として存在し、六価のものは2個の酸素原子と結合し、[UO2]2+という形のウラニルuranylイオンとして存在することもある。トリウムはすべて四価のイオンとして存在し、ウランの四価のイオンとともに広い範囲の同形置換関係(置換が行われても根本的な原子配列の変化がないもの)をもつ。これらのイオンは鉱物内でその主成分をなすことも多いが、結合半径が近似した希土類元素の一部を置換する場合も多い。
いずれの場合も、放射性元素が生成されて時間がたつと、その放射能によって結晶構造の破壊が進行し、非結晶質状態(メタミクト状態という)へ移化することになる。その程度はさまざまであるが、多く屈折率、複屈折、比重の低下、水分含量の増大などがおこる。メタミクト状態にある物質は、加熱によって原状態に復帰するか、あるいは別の結晶相、あるいは2種類以上の結晶相を構成していた化合物などの集合体となる。
[加藤 昭]