日本大百科全書(ニッポニカ) 「教育刑」の意味・わかりやすい解説
教育刑
きょういくけい
刑罰の本質は犯罪者の教育(または改善、更正)にあるとする教育刑主義の考え方に基づいた刑をいう。刑法上の刑罰の本質について、「新旧両派の争い」(刑法学における旧派と新派の対立)のなかで、応報刑主義か目的刑主義かという激しい対立があった。教育刑主義は目的刑主義の一種である。応報刑主義(応報刑論)では、刑罰とは犯した罪に対する報い(または贖(あがな)い)と解されるのに対して、目的刑主義(目的刑論)によれば、刑罰の意義は犯罪予防といった一定の目的に役だちうる点にあると解される。ただ、現在では、応報刑か教育刑かという二者択一ではなく、応報刑の範囲内で犯罪予防の目的を実現する考え方(相対的応報刑論)が支配的である。
[名和鐵郎]