日本大百科全書(ニッポニカ) 「数式処理」の意味・わかりやすい解説
数式処理
すうしきしょり
formula manipulation
数式を式のままコンピュータによって処理する仕事、技術、またはその技術を研究する学問分野をいう。処理の内容は、多項式の加減乗、微分、式の代入・展開・整理などが基本的なもので、このほか有理式演算、最大公約多項式の計算、数式を要素とする行列や行列式の計算、数式を係数とする一次方程式の解法、有理式の不定積分、多項式の因数分解などが研究されている。
歴史的には、1950年代の末から60年代にかけて行われた天文学における膨大な数式の処理をコンピュータを用いて自動化あるいは半自動化する試みと、人工知能の研究における大学初年程度の積分(不定積分)の問題を発見的に解くアメリカのスレイグルJ. R. Slagleのプログラムの成功などに始まる。現在は、人工知能における発見的手法よりは、数式の処理のため代数計算のアルゴリズム化、およびその効率化の方向で研究が進められている。代表的な数式処理システム(CAS)として、アメリカのマサチューセッツ工科大学のMACSYMA(マクシマ)およびユタ大学を中心とするREDUCE(リデュース)などが有名である。
[米澤明憲]
『伊理正夫他著『岩波講座 情報科学23 数と式と文の処理』(1981・岩波書店)』