コトバンクはYahoo!辞書と技術提携しています。

数値計算 すうちけいさんnumerical computation

世界大百科事典 第2版の解説

すうちけいさん【数値計算 numerical computation】

方程式を解いてxという解を得たとしよう。数学ではこれでよいが,その結果を用いて何か工作物を作るとき,この長さに材料を切り取らなければならないことがある。このときはむしろ1.4142mという答を得るほうが現実的である。このように,たとえ数式として得られる場合でも,解を数値で得ようとする技法を数値計算という。また,たとえば5次以上の代数方程式は,係数が勝手に与えられる場合には解法がないが,数値計算を用いれば真の解に近い近似解が得られる。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について | 情報

デジタル大辞泉の解説

すうち‐けいさん【数値計算】

コンピューターを使って、代数的または解析的に解くことが困難な問題、または手計算では不可能な計算量が膨大な問題を解くこと。近年、コンピューターの演算能力の飛躍的な向上に伴い、大規模な計算が可能となり、適用範囲が広がったが、丸め誤差打ち切り誤差といった数値計算特有の誤差の扱いに注意する必要がある。

出典|小学館デジタル大辞泉について | 情報 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

数値計算
すうちけいさん

数学的に問題を解く方法には、大別して(1)解析的解法(数式の変形による解法)、(2)数値的解法(数値の演算による解法)、(3)その他(図式解法など)がある。(2)によって問題を解くこと、およびそのための計算を、数値計算あるいは数値解析という。数値的解法の特長は、解析的方法で解くことのできない問題にも適用でき、適用可能範囲が広いことである。一方、数値的解法の難点は、計算の手間がかかることであるが、コンピュータの利用により、計算上の困難が大幅に緩和されたので、数値的解法が広く用いられるようになった。
 数値的に問題を解くには、解析的方法とは違ったアプローチが必要であり、(1)確実に結果が得られること、(2)演算回数が少ないこと、(3)精度がよいこと、が望ましい。そのための各種の技法が開発されている。とくに、以下のような標準的問題に対しては、解法がよく整備されている。
 ・連立一次方程式
 ・高次代数方程式
 ・行列式、逆行列
 ・固有値問題
 ・線形計画法
 ・補間、近似
 ・微分、積分
 ・常微分方程式
 ・偏微分方程式
 ・フーリエ変換
 数値計算の方法には、代数的公式に数値を入れるだけですむものもあるが、粗い近似値を逐次改良していく、関数を簡単な式で近似して計算する、微分方程式を差分方程式で近似して解く、などの方法も必要に応じて併用される。数値計算においては、普通、丸め誤差や近似誤差は避けられないので、なるべく誤差の混入を少なくするように、また、混入した誤差の影響を小さくするように、計算の方法をくふうする必要がある。
 連立n元一次方程式の根はクラメルの公式(行列式による表現)を使うと簡単な形に表されるが、この方法は数値計算には向かない。普通はガウスの消去法といって、係数を表の形にまとめ、表の操作によって未知数を一つずつ消去していく方法が用いられる。n元の方程式を解くに要する演算回数は乗算、減算、各約n3/3回である。[戸川隼人]

数値計算の歴史

数値計算の歴史は古い。紀元前に書かれたといわれる『九章算術』(中国)に連立一次方程式の解法がみられる。同じころ、西洋ではトレミーの数表(三角関数表)がつくられている。中世にはアラビアで一次方程式、二次方程式の一般解法が確立された。16世紀には対数表が発明され、精密計算が容易になった。その後、微積分学の発展とともに数値計算法も急速に進歩した。とくに大きな貢献をしたのはオイラーとガウスである。20世紀に入ると差分法その他による微分方程式の数値解法が広く用いられるようになった。近年は、コンピュータのおかげで、またコンピュータ活用のために不可欠の技術として、数値計算法は著しい発展を続けている。
 現在では、数値計算は、一般の理論計算、技術計算に用いられるほか、シミュレーション(たとえば、原子炉が故障したとき、どのようになるかを数値的に実験する)、データ解析(たとえば、人工地震の反射波の計測値を解析して地下資源を調べる)などの面でも盛んに用いられている。[戸川隼人]

数値計算ソフトウェア

数値計算のためのよく使われる解法や計算法のプログラム集が汎用(はんよう)数値計算ソフトウェアとして公開されている。代表的なものとしてはIMSL(有料)、NAG(有料)、netlib(無料)などがある。MATHEMATICA(有料)は数式処理のためのプログラムであるが、数値計算やグラフィック表示の機能を含んでいる。線形計算に関しては、MATLAB(有料)も定評がある。[戸川隼人]
『伊理正夫・藤野和建著『数値計算の常識』(1985・共立出版) ▽渡部力・名取亮・小国力監修『Fortran77による数値計算ソフトウェア』(1989・丸善) ▽William H. Press、William T. Vetterling、Saul A. Teukolsky、Brian P. Flannery著、丹慶勝市・奥村晴彦訳『C言語による数値計算のレシピ』(1993・技術評論社) ▽戸川隼人著『科学技術計算ハンドブック』新装版(1998・サイエンス社) ▽山本喜一・榊原進・野寺隆志・長谷川秀彦著『これだけは知っておきたい数学ツール』(1999・共立出版)』

出典|小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について | 情報 凡例

世界大百科事典内の数値計算の言及

【数式処理】より

…より詳細には,コンピューター内部の数式表現法を工夫し,効率的な計算法を考案して,ソフトウェアとして実現し,物理学や数学などの計算に役立てることである。コンピューターによる科学技術計算といえば,かつては数値計算を意味していたが,近年は数式処理技術が進歩し,大学レベルの計算でもたちどころに実行するまでになり,数式処理と数値計算およびグラフィック出力を一体化したシステムが普及してきた。そのため,数式処理ソフトを利用した数学教育も試みられている。…

※「数値計算」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について | 情報

数値計算の関連キーワードベクトル型スーパーコンピューターファンデルポールの方程式ワークステーション超並列コンピュータ数値制御工作機械シミュレーションイテレーションバタフライ効果数値予報モデルモンテカルロ法FORTRAN数値流体力学図式計算法清水辰次郎窪田 正八ALGOL窪田正八森口繁一常用対数数値予報

今日のキーワード

アウフヘーベン

ヘーゲル弁証法の基本概念の一。あるものを否定しつつも、より高次の統一の段階で生かし保存すること。止揚。揚棄。→アン‐ウント‐フュール‐ジッヒ →弁証法...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android

数値計算の関連情報