正宗白鳥の評論。1932年7月,中央公論社刊。のち《作家論》(〈一〉〈二〉,1941-42)として増補改編し,創元社刊。〈二〉には〈西鶴〉が加えられた。〈文学の民衆化〉に大きな役割を果たした代表的な円本である改造社版《現代日本文学全集》の刊行(1926-31)に合わせるかたちで,順次作家をとりあげ,26年以降《中央公論》に書きついだものに《明治文壇総評》を添えてまとめられた。夏目漱石,徳富蘇峰と徳冨蘆花,尾崎紅葉,岩野泡鳴,森鷗外,正岡子規,樋口一葉と高山樗牛,田山花袋,二葉亭四迷,河竹黙阿弥,芥川竜之介,小山内薫,徳田秋声,幸田露伴,志賀直哉と葛西善蔵,島崎藤村,谷崎潤一郎と佐藤春夫,菊池寛,永井荷風の各論を収めている。《作家論》では坪内逍遥,有島武郎,岡本綺堂・岡鬼太郎・松居松翁,真山青果,久米正雄,久保田万太郎,宇野浩二,横光利一,直木三十五と十一谷義三郎その他,吉川英治と長谷川伸その他,を補い,大衆作家も視野に収めて年代順に編み直された。同時代を生きた作家の目で,鋭く,温かく,自由に語り描き上げられた作家像は,さながらにその風貌姿勢を伝えて魅力に富む。
執筆者:榎本 隆司
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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