円本(読み)えんぽん

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

円本
えんぽん

1冊1円で発売された安い価額の全集叢書類をいう。発端は 1926年 12月,改造社が刊行しはじめた「現代日本文学全集」。出版界の不況と大衆文化状況のなかで,続々と円本が登場して 100種にも及び,円本合戦と称された。

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デジタル大辞泉の解説

えん‐ぽん〔ヱン‐〕【円本】

定価が1冊1円均一の廉価な全集。大正15年(1926)改造社の「現代日本文学全集」に始まり、昭和初期の出版界に同様の全集が流行したところから、この名が生まれた。

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百科事典マイペディアの解説

円本【えんぽん】

日本で関東大震災後の出版界の不況打破のため,1926年―1929年ころまで予約売価1冊1円で出版された廉価版の全集・双書類。1926年の改造社版《現代日本文学全集》に始まり,諸出版社が競って発行し,100種以上に達した。当時,東京市内を1円均一で走るタクシーを〈円タク〉と称したが,それにあやかった命名。大衆社会の到来にともなう読者層の拡大に対応するマス・セールだったが,企画の重複などから急速に飽きられた。
→関連項目改造新潮社[株]山本実彦

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世界大百科事典 第2版の解説

えんぽん【円本】

昭和初期に多くの出版社から,いっせいに200点以上も刊行された全集本の総称。当時東京市内を1円均一で走るタクシーを〈円タク〉といったが,これらの全集も定価1円のものが多かったところから,円本と俗称された。創始者は改造社社長山本実彦で,木村毅らに書目選定を依頼,《現代日本文学全集》として,1926年12月に第1回配本《尾崎紅葉集》を出版した。当初は全37巻別巻1冊の予定であったが,予約読者が23万人(のちに40万~50万人)にのぼったので,全62巻別巻1冊に拡大した。

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大辞林 第三版の解説

えんぽん【円本】

昭和初期、定価一冊一円で発売された全集物。1926年(大正15)改造社版「現代日本文学全集」に始まる。その質に比して廉価であったため、異常な売れ行きを示し、各社の企画が続出して、文芸・出版界の大衆化の一時期を画すものとなった。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

円本
えんぽん

大正末期から昭和初期にかけて定価1冊1円という廉価で出版された全集や双書類をいう。出版界の不況打開のために企画され、史上空前の円本ブームを巻き起こした。きっかけをつくったのは改造社の『現代日本文学全集』である。明治・大正期の代表作を全37巻(ほかに別巻『現代日本文学大年表』。のち追加され全63巻)に網羅し、これを1円均一で予約募集を行い、一挙に三十数万の予約購読者を獲得した。予約規定によると、1926年(大正15)11月に配本を開始し28年(昭和3)末に完結の予定で、申込金1円(これは最終巻に充当)のほか、会費として月1円を払い込む、というもの。第1回配本は『尾崎紅葉集』で、菊判、311ページ、作品のほか、著者の小伝、著作年表、口絵1丁を付し、本文は6号活字ルビ(振り仮名)付き3段組みである。改造社社長山本実彦(さねひこ)は予約募集にあたり「特権階級の専有物であったわが芸術を百万大衆に解放する」と宣言、これが出版革命であると称し、読者の支持と協力を訴えた。改造社の成功に刺激された各社は、廉価の全集、双書類を次々と企画、出版した。27年のおもなものとして、新潮社『世界文学全集』、春陽堂『明治大正文学全集』、第一書房『近代劇全集』、平凡社『世界美術全集』、同『現代大衆文学全集』、アルス『日本児童文庫』、興文社『小学生全集』、春秋社『世界大思想全集』などがある。28年には、日本評論社『現代法学全集』、同『現代経済学全集』、改造社『経済学全集』その他がある。円本によって潜在読者層が開拓されたが、その反面、廉価本が氾濫(はんらん)し、読者の本に対する信頼感が薄らぎ、一般書籍の売れ行き不振を招いた。また、質の高い双書類や単行本の出版が困難になるなどの影響も見逃せない。[矢作勝美]
『鈴木敏夫著『出版 好不況下興亡の一世紀』(1970・出版ニュース社)』

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精選版 日本国語大辞典の解説

えん‐ぽん ヱン‥【円本】

〘名〙 定価が一冊一円均一の全集・双書本。また、安い書物。そのさきがけは大正一五年(一九二六)に刊行された改造社の「現代日本文学全集(全六三巻)」で、昭和初期を最盛期として、各分野の出版物に及んだ。
※文学史的空白時代(1928)〈大宅壮一〉三「或者は円本の印税によって無為徒食し」

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世界大百科事典内の円本の言及

【ベストセラー】より

…大正時代は倉田百三《出家とその弟子》(1916)をはじめ,阿部次郎,西田幾多郎らの思想書や中里介山,白井喬二らの大衆文学が部数を伸ばした。昭和初期は円本が200点以上も出て,最も好調なものは40万~50万部の読者を獲得した。また藤森成吉の《何が彼女をさうさせたか》(1927)をはじめとするプロレタリア文学や九条武子の《無憂華》(1927)などが大いに売れた。…

※「円本」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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