革命拠点を海外につくる「国際根拠地論」に基づき、レバノンに出国した重信房子しげのぶ・ふさこ元最高幹部らが1970年代に結成した。メンバーの
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新左翼系の過激派武闘組織。1970年代から1990年代後半にかけて中東パレスチナで活動した。前身は共産主義者同盟赤軍派(共産同赤軍派)の国際根拠地建設部門。共産同赤軍派は「現代社会は帝国主義時代から社会主義時代への過渡期である」(過渡期世界論)を基本的な歴史認識として「世界革命戦争」「世界赤軍」「国際根拠地」という基本テーゼを掲げ、塩見孝也(たかや)(1943―2017)、田宮高麿(たかまろ)(1943―1995)らによって1969年(昭和44)に結成された。その後共産同赤軍派は「国際根拠地建設」路線のもとで、1970年日本航空機よど号のハイジャックにより田宮以下8名が北朝鮮、ピョンヤンへ向かった直後、政治局員重信房子(しげのぶふさこ)(1945― )は偽装結婚して「赤軍派アラブ地区委員会」設立のためにレバノン、ベイルートへ出国し、アラブ赤軍を名のった。
1972年共産同赤軍派と京浜安保共闘革命左派の合体によって結成された過激派武闘組織の連合赤軍による「あさま山荘事件」と、その直後に発覚した14名の「連合赤軍粛清」事件を契機に、重信らは共産同赤軍派と決別、独自の組織・活動を展開し、組織名を「日本赤軍」へと改称。それ以後は約30年間にわたって、新左翼系唯一の海外武装闘争組織としてパレスチナで武装解放闘争を展開した。
1972年日本赤軍の存在を世界に震撼(しんかん)させた最初の闘争がイスラエル、テル・アビブ・ロッド(パレスチナ名リッダ)空港襲撃事件であった。これはイスラエルによるディル・ヤシン村民100名以上の虐殺に対して、岡本公三(1947― )、奥平剛士(つよし)(1956―1972)、安田安之(やすゆき)(1958―1972)の日本赤軍ゲリラがPFLP(パレスチナ解放人民戦線)との共同作戦として決行した報復奇襲作戦(死者24名、負傷者76名、ゲリラ側死亡2名、岡本は逮捕される)であり、この闘争論理は「武装闘争こそが最高のプロパガンダである」「虐(しいた)げられた者の語ることばは、銃以外になく、虐げられた者が心に抱くヒューマニズムは、武装闘争以外にない」(PFLPとの共同テーゼ)であり、当時、国内ではこの闘争に呼応して現地と国内支援グループが事件に先だって共同編集したニュース映画『赤軍――PFLP・世界戦争宣言』(1971)の国内遊説キャラバン隊が編成されたり、国際連帯集会が日本列島を縦断するなど、大きなインパクトを与えた。
その後、日本赤軍によって以下のような闘争が展開された。1973年「被占領地域の息子たち」(パレスチナ解放人民戦線対外作戦部局指揮下の国際戦闘組織)との共同軍事作戦では、日航404便をオランダ上空でハイジャック後にドバイ空港で爆破。1974年PFLPとの共同軍事作戦ではベトナム戦争石油中継基地だったシンガポールのシェル石油爆破、同時にクウェート日本大使館占拠。同年のオランダ、ハーグのフランス大使館占拠闘争では「日本赤軍ヨーロッパ蜂起計画」関連で逮捕された山田義昭(よしあき)(1949― )を解放。1975年マレーシア、クアラ・ルンプールのアメリカおよびスウェーデン大使館占拠闘争では赤軍派や東アジア反日武装戦線メンバー5名を東京拘置所から解放。1977年ダッカ空港日航472便ハイジャック闘争では一般刑事犯を含めた5名を東京拘置所から「超法規手続」によって「解放」。だが、このような一連の軍事作戦はかならずしも長期的展望をもって実行されたわけではない。武装・軍事闘争路線を遂行・継続していくことの困難性に関しては「自己犠牲と献身」「革命的敗北主義」「英雄主義」を前提にした「国際主義闘争路線」であったと総括。やがて、中東全域における政治的軍事的力関係が変化するなかで、アラブにおける拠点維持も困難になり、武装闘争路線も否定されていく。
その後、日本赤軍から「人民革命党」への組織再編過程で、メンバーの逮捕も相次ぎ、2000年(平成12)リーダー重信の帰国・逮捕(懲役20年。2022年5月刑期満了により出所)に及んで日本赤軍は解散を余儀なくされた。解散宣言のなかで重信は「徹底した民主主義闘争路線への転換」を提起した。なお、「重信解散声明」以後も現地に残留したメンバーの所在や活動の実態は知られていない。
[蔵田計成・編集部 2024年2月16日]
『重信房子著『十年目の眼差しから』(1983・話の特集)』▽『重信房子著『大地に耳をつければ日本の声がする――日本共産主義運動の教訓』(1984・亜紀書房)』▽『日本赤軍編著『日本赤軍20年の軌跡』(1993・話の特集)』▽『重信房子著『りんごの木の下であなたを産もうと決めた』(2001・幻冬社)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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