改訂新版 世界大百科事典 「日本農学会」の意味・わかりやすい解説
日本農学会 (にほんのうがっかい)
日本の農学に関係する諸学会を統括する連合体。細分化された農学各分野の専門学会相互間の連絡を密にし,農学およびその技術の総合的発展を目ざすことを目的として1929年11月に東京で開催された設立総会を契機として発足した。最初16学会が参加したが,その後新しく設立された関連学会が順次加わって,2008年現在は作物,園芸,造園,雑草,草地,育種,植物病理,応用動物昆虫,蚕糸,土壌肥料,農芸化学,農薬,農業機械,農業施設,農業気象,海水,水産,畜産,家禽(かきん),獣医,農業経済,漁業経済,熱帯農業など50学会より構成され,各学会より選出された役員によって運営され,事務所は東大農学部内にある。当初,年1回の大会では農学賞の授与や特別講演が行われ,引き続き専門部会で,多数の研究発表が行われていた。しかし,専門分野の著しい分化と研究数の増加に伴い,第2次世界大戦を境として,研究発表は個々の学会が独自に行う形に変わってきている。現在は,毎年4月に日本農学大会が開催され,各学会から推薦されたすぐれた研究業績5~7件に対し,農学分野では最も権威があるとされる日本農学賞が授与される。また同時に農学全体にわたる題目,例えば〈人間環境を守る農業〉〈生物資源の未来〉などをとりあげシンポジウムを開催している。一方,対外的には,日本の農学研究分野を代表する機関として,国際的研究交流の推進や,研究・技術・教育行政に対する提言などを行ってきている。戦後はとくに日本学術会議との連携のもとにこの面での活動が行われている。また同会議の協力を得て農業分野の研究を網羅した研究抄録誌・文献集《日本農学進歩年報》を約25年にわたって刊行し,創立50周年を記念し《日本農学50年史》(1980)を刊行した。
執筆者:岩田 正利+山崎 耕宇
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報