農芸化学(読み)ノウゲイカガク(英語表記)agricultural chemistry

デジタル大辞泉 「農芸化学」の意味・読み・例文・類語

のうげい‐かがく〔‐クワガク〕【農芸化学】

農業生産化学的側面に関する研究を行う農学の一部門。土壌肥料農薬醸造・植物栄養・農産加工化学・畜産化学など多方面にわたる。

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精選版 日本国語大辞典 「農芸化学」の意味・読み・例文・類語

のうげい‐かがく‥クヮガク【農芸化学】

  1. 〘 名詞 〙 農業生産の化学的側面に関する学問総称。肥料学、土壌学、醸造学、林産化学、畜産化学などを含む。〔稿本化学語彙(1900)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「農芸化学」の意味・わかりやすい解説

農芸化学 (のうげいかがく)
agricultural chemistry

化学の原理や手法をもとに,農業生産およびその関連産業の諸問題を研究するために農学の一分野として発足した学問であるが,現在はあらゆる生物現象を化学的に解明し,得られた知見を第1次および第2次産業に応用する学問となっており,ライフサイエンスやバイオテクノロジーの発展に貢献している。農芸化学は化学や生物学を基礎として,農業生産,食品産業その他の産業活動と深い関連をもって発展する学問であり,食糧,資源,エネルギー,環境という人類生存・繁栄の基盤になる諸問題の解決に役だっている。

 歴史的には19世紀中ごろのドイツの化学者J.vonリービヒによって発展した学問であるが,日本では約100年前に駒場農学校(東京大学農学部の前身)と札幌農学校(北海道大学農学部の前身)が創立されたとき,農学の一部として発足した。札幌農学校はアメリカの農学者W.S.クラークによって指導を受けた。駒場農学校には,1881年に来日したドイツ人教師O.ケルナーや,彼ののち93年に来日した同じくドイツ人のロイブOskar Loewらによって,リービヒの流れをくむドイツ流の農芸化学が導入され,基礎が築かれた。しかし欧米の農芸化学の研究が,古来からの醸造,肥料,農薬という分野の学問に現在でも限定して進められているのに対し,日本では現在では世界に類のないユニークな発展をし,広範な分野を包含する学際的かつ近代的な学問に成長している。これは,鈴木梅太郎によるビタミンB1オリザニン)の発見,藪田貞治郎による植物ホルモンのジベレリンの発見,その他うまみ物質のグルタミン酸ナトリウムやイノシン酸,各種生理活性物質,抗生物質,新肥料,農薬の開発など,多数の画期的な業績がこの分野から生みだされたことによる。

 農芸化学で現在研究されている分野には次のようなものがある。(1)農業と最も密接に関係し,植物の生産基盤である土壌やそこに育つ植物の生理,生化学について研究したり,すぐれた肥料の生産,利用の研究をし,作物の増収をはかる分野。(2)生物が生産する物質の単離・同定・合成を研究し,植物ホルモン,昆虫フェロモン,抗生物質などの発見や開発をし,生物生産に活用する分野。(3)代謝制御発酵法によるアミノ酸,核酸などの生産など,微生物を利用した数多くの有用物質の生産,あるいは微生物によるバイオマス資源や飼料用タンパク質の生産を研究する分野。(4)栄養豊かで安全かつ美味な食品を供給するために,食品の利用・保蔵に関する化学的あるいは工学的研究や,動物の栄養に関する研究をする分野。(5)上記の実用的,応用的な研究をするために,生物の代謝や酵素の研究をしたり,物質の分析,同定,合成法などについて基礎的に研究する分野。
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化学辞典 第2版 「農芸化学」の解説

農芸化学
ノウゲイカガク
agricultural chemistry

農業生産に関連する化学的事象の研究や,農業・水産業などの生産物の利用についての化学的研究などを行う,広義の応用化学の一分野をいう.土壌学,肥料学,農薬学,栄養化学,発酵・醸造学,食品製造化学,農産物利用学,林産化学,畜産化学,水産化学などの諸分科があったが,最近はよりわかりやすい応用生物化学や応用生命化学などの名称が多く用いられている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「農芸化学」の意味・わかりやすい解説

農芸化学
のうげいかがく
agricultural chemistry

農業生産に関する化学的現象を研究する応用化学の一分野。土壌学、肥料学、栄養学、農薬学、酵素化学、醸造学、発酵学、栄養化学、林産化学、畜産化学、水産化学、食糧化学その他の諸分科がある。

[中原勝儼]

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