明実録(読み)みんじつろく(その他表記)Míng shí lù

改訂新版 世界大百科事典 「明実録」の意味・わかりやすい解説

明実録 (みんじつろく)
Míng shí lù

中国,明朝13代の皇帝実録。正式には《大明実録》といい,俗に《皇明実録》ともいう。全3058巻。太祖実録257巻,太宗実録274巻,仁宗実録10巻,宣宗実録115巻,英宗実録361巻,憲宗実録293巻,孝宗実録224巻,武宗実録197巻,世宗実録566巻,穆宗実録70巻,神宗実録596巻,光宗実録8巻,熹宗実録87巻(存74巻)よりなる。なお崇禎実録17巻は,実は真の実録ではなく民間の編纂物である。《明実録》は皇帝の事跡を中心に,広くその治世に起こった重要な政治軍事・社会・経済上の諸事件を根本史料に基づいて記述したもので,明代史の研究には最も重要な史料の一つであるが,従来写本で伝えられた諸本には誤脱残欠錯簡が多い。現在最も流布しているのは江蘇国学図書館本による影印本(南京,梁鴻志刊)と国立北平図書館本による影印本(中央研究院歴史語言研究所刊)で,後者には別本による校勘記を付している。
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日本歴史地名大系 「明実録」の解説

明実録
みんじつろく

二千九一四巻

解説 中国明朝(一三六八―一六四四年)の太祖洪武帝から憙宗天啓帝にいたる実録の総称ほか官撰ではないが最後の皇帝毅宗崇禎帝の「崇禎実録」七巻がある。一三七二年の太祖による招諭使楊載の派遣、それに応えた中山王察度の入貢をはじめ、琉球関係の記録も多い。当実録は「中山世譜」に取込まれるなど、沖縄の諸史編集にも大きな影響を与えた。なお歴代宝案編集参考資料として「『明実録』の琉球史料」が刊行中。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「明実録」の意味・わかりやすい解説

明実録
みんじつろく
Ming-shi-lu

中国,明朝の 13代の皇帝の実録。正式には『大明実録』,俗に『皇明実録』といい,『明実録』はそれらの略称。 3058巻。その内容は皇帝の個人的言行にとどまらず,その治世における重要な政治,社会,経済の諸事象がすべて年代順に記録され,明代史研究の根本史料である。門外不出の書であったが,写本として後世に伝えられ,これらの写本のいくつかが日本にも伝わり,宮内庁書陵部国立公文書館国立国会図書館などに所蔵されている。 1940年江蘇国学図書館本が影印され,また 1967年にはタイワン (台湾) の中央研究院歴史語言研究所刊の影印本が復刻された。

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