太祖(読み)タイソ(英語表記)Tài zǔ

デジタル大辞泉 「太祖」の意味・読み・例文・類語

たい‐そ【太祖】

中国・朝鮮・ベトナム王朝で、始祖である皇帝に贈られた廟号趙匡胤ちょうきょういんチンギス=ハン朱元璋しゅげんしょうヌルハチ李氏朝鮮李成桂りせいけいなどが有名。
物事がそこから始まったおおもと。また、ある事柄の始祖。

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改訂新版 世界大百科事典 「太祖」の意味・わかりやすい解説

太祖 (たいそ)
Tài zǔ
生没年:927-976

中国,宋朝を開創した皇帝。姓は趙,名は匡胤(きよういん)。涿(たく)郡(河北省)の人。五代の武人趙弘殷の次子として洛陽の軍営で生まれた。後周世宗に重用され,禁軍(親衛隊)の総司令官である殿前都点検になった。959年(顕徳6),世宗が没して,わずか7歳の恭帝が後をついだが,それを不満とする禁軍将兵たちは,翌年正月,趙匡胤を皇帝に擁立した。彼は即位して国号を宋と定め,世宗が始めた中国統一の事業をひきつぎ,江南に割拠していた荆南,楚,南漢,後蜀,南唐をつぎつぎに征服して,唐末以来の分裂状態にほぼ終止符を打った。統一事業を進める一方で,君主独裁の中央集権体制をつくっていった。まず五代に王朝が頻繁に交代したのは,多くは禁軍のクーデタによるものであったから,その危険性をなくすため,総司令官の殿前都点検を廃止して,侍衛馬軍,侍衛歩軍,殿前諸班の3軍を分立し,それを統率するものは皇帝のみとした。

 さらに唐末五代の分裂抗争は,藩鎮(地方軍閥)が強大になって皇帝権力が弱かったことによるとの反省から,これまで藩鎮がにぎっていた地方行政,財政,軍事などの諸権限を中央に回収して,その勢力を削減していった。すなわち税収のほとんどすべてを中央に送納させて,地方には最低必要量しかとどめさせず,強壮な兵卒は禁軍に編入して廂軍(地方軍)を骨抜きにした。また地方行政官はすべて中央から文臣を派遣し,しかも知州(州知事)のほかに通判(副知事)を置いて互いにけん制させるなど,地方勢力の台頭を防止する方策を講じた。中央機構でも同中書門下平章事宰相)のほかに参知政事(副宰相)を置いて合議制とし,財政は三司使,軍政は枢密使にゆだねるなどして宰相の権限を縮小し,特定の臣僚に権力を集中させないようにした。こうした君主独裁体制はつづく太宗によっていっそう強化され,後世に引きつがれた。彼には逸話が多く,後代には《飛竜記》という小説さえ作られた。
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太祖(遼) (たいそ)
Tài zǔ

耶律阿保機(やりつあぼき)

太祖(北魏) (たいそ)
Tài zǔ

拓跋珪(たくばつけい)

太祖(金) (たいそ)
Tài zǔ

太祖(高麗) (たいそ)
T`ae-jo

王建(高麗)

太祖(清) (たいそ)
Tài zǔ

太祖(後梁) (たいそ)
Tài zǔ

太祖(明) (たいそ)
Tài zǔ

太祖(李朝) (たいそ)
T`ae-jo

太祖(魏) (たいそ)
Tài zǔ

太祖(南斉) (たいそ)
Tài zǔ

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百科事典マイペディア 「太祖」の意味・わかりやすい解説

太祖【たいそ】

中国・朝鮮で王朝の創始者に多く贈る諡(おくりな)。→曹操(魏)/阿骨打(あくだ)(金)/洪武(こうぶ)帝(明)/朱全忠(後梁)/チンギス・ハーン(元)/ヌルハチ(清)/耶律阿保機(やりつあぼき)(遼)/王建(高麗)/李成桂(李朝)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「太祖」の意味・わかりやすい解説

太祖
たいそ

(1) Patriarchs カトリックの用語としては,旧約聖書に記される人類の始祖たち,すなわち,大洪水以前のアダムからノアまでの 10人をさすが,より狭義にはイスラエルの始祖である族長たち,すなわち,アブラハムイサク,ヤコブ,およびヤコブの 12人の子に用いられる。なお原語は主要司教座の司教の称号に用いられるが,その場合は,総大司教 (総司教) と訳される。 (2) 初代の帝王,王朝の始祖。中国,朝鮮,ベトナムで用いる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「太祖」の意味・わかりやすい解説

太祖
たいそ

中国前近代の廟号(びょうごう)の一つ。始祖の意であり、創業の君主を称する。北宋(ほくそう)の趙匡胤(ちょうきょういん)、明(みん)の朱元璋(しゅげんしょう)らが有名。かならずしも王朝の初代に限らず、たとえば三国魏(ぎ)は曹操(そうそう)を太祖にあてている。

[尾形 勇]

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