時期割れ(読み)じきわれ(英語表記)season cracking

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「時期割れ」の意味・わかりやすい解説

時期割れ
じきわれ
season cracking

金属材料を荷重状態または冷間加工後そのままの状態で放置すると自然に割れが入る現象をいう。七三黄銅,高力アルミニウム合金,洋銀などにみられる。黄銅,洋銀の場合,原因はアンモニア水などによる応力腐食 (→金属の腐食 ) とみられ,200~300℃の低温焼鈍で残留応力を除去するか,塗装やメッキ腐食媒質の侵入を防ぐとよい。銅合金水銀 (金属または化合物の) と接触させると粒界に沿って割れが進む。これは液体金属としての水銀による脆化 (液体金属脆化) で応力腐食とは区別されるが,残留応力の有無の判別法として利用されることがある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「時期割れ」の意味・わかりやすい解説

時期割れ
じきわれ
season cracking

金属材料が室温で放置されているうちに材料中に亀裂(きれつ)が生じて割れる現象。冷間加工などによって材料の内部にひずみが残っているために、大気中の腐食性ガスや付着した腐食性液による応力腐食が進行して割れるもので、黄銅や亜鉛を含むアルミニウム合金に発生しやすい。低温焼きなましで残留応力を除去したり、微量の他の金属を添加することで防止される。残留応力や微細な亀裂の検出には、材料を破壊せずに放射線超音波磁気などを用いる非破壊検査が利用される。

[林 邦夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の時期割れの言及

【応力腐食割れ】より

…弱い腐食環境であっても水素脆化機構による応力腐食割れがおこるので,遅れ破壊もこの一例にすぎない。
[時期割れ]
 応力腐食割れという現象がはっきり認識される以前から知られていたことの一つに時期割れseason cracking(置割れともいう)がある。これはもともとは木材のひび割れに使った言葉である。…

※「時期割れ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android