木蠟(読み)もくろう(その他表記)Japan wax
Japan tallow

改訂新版 世界大百科事典 「木蠟」の意味・わかりやすい解説

木蠟 (もくろう)
Japan wax
Japan tallow

おもにハゼノキ果実から得られる蠟状物質で,ハゼ蠟 haze waxともいう。高級脂肪酸グリセリド油脂に属し,高級脂肪族アルコールエステルであるいわゆる蠟とは異なる。木蠟は古くから中国で採取されていたが,原料であるハゼノキの栽培,改良が日本において長年にわたって行われたため,日本の特産品となっており,九州,中国,四国地方に産する。ハゼノキはその果実に木蠟を16~40%,果皮に49~70%,果肉に50~55%含有する。採取は圧搾法,抽出法およびその併用法がとられるが,一般には抽出法と併用法が行われている。採蠟した生蠟(きろう)を漂白したものが白蠟(さらし蠟)で,製品としての木蠟はこれである。漂白処理は生蠟をアルカリ液とまぜて小片とし,天日にさらす天日さらしが一般的で,収率は95%である。薬品を用いた化学的処理法もあるが,収量の低下,製品の劣化等の理由であまり行われない。白蠟は,白色~淡黄色で,比重0.964~1.005,融点48~54℃,主成分はパルミチン酸(81%)およびオレイン酸(13%)のグリセリドである。また木蠟の特徴として6%の二塩基酸の日本酸japanic acid C19H38(COOH)2を含み,この組成が緻密(ちみつ)な結晶性,粘靱(ねんじん)な物性を与えているとされている。ポマード口紅クリームなどの化粧品,クレヨンなどの文具,つや出し剤,塗料原料,また蠟型材,繊維処理剤などに用いられ,アメリカ,ヨーロッパなどにも輸出されていたが,最近は石油パラフィンや合成ワックスに大きく代替されている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の木蠟の言及

【ウルシ(漆)】より

…またウルシの分布はヒマラヤ,中国にかけての暖温帯・照葉樹林帯で,日本には古くに導入されたものである。樹皮を傷つけ漆をとるほか,材は細工物とし,果実から良質の木蠟がとれ,新芽は可食で強壮剤となる。 近縁のヤマウルシR.trichocarpa Miq.(イラスト)は外見ウルシに似ているが,葉の最下部の1対が他の小葉より小さく,果実は扁歪円形で表に短い刺毛があるので区別できる。…

※「木蠟」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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