広義にはパステル,コンテなどを含む棒状の画材一般を指すが,日本では,狭義にパラフィン,脂肪酸,木蠟などを溶融し顔料を混和させた棒状の色彩画用具を指し,主として子どもが用いる。古くはギリシア・ローマ時代に蠟と顔料とを混和させた着色材があったという。15世紀からヨーロッパでパステルが使われ,16世紀中ごろには普及したが,19世紀末にフランスのあるパステル画家が筆を要しない棒状の画材としてクレヨンを考案し,それをコンテ社が第1次世界大戦中に商品化した。当時フランスに留学していた画家山本鼎(かなえ)がこの新画材を日本にもたらし,1921年桜商会がその製造,販売に着手した。山本はみずからの提唱する自由画教育運動の見地から,小学校低学年児童用の画材としてクレヨンが有益なことを唱導し,自由画教育の普及と併行してクレヨンは全国的に普及した。クレヨンは色彩が鮮明ではあるが重ね塗りによる色の混合ができず,他方,パステルは重ね塗りはできるが,顔料に白粘土が混入されていてわずかな接触でも剝落する欠点がある。この両者の欠点を克服し子どもの絵画表現を深める画材として,25年山本と桜商会とが協力して開発したものが,油性の媒材で顔料を練り合わせたクレパスで,重ね塗りが可能なうえに安定した描画が得られるようになった。
→絵具
執筆者:佐藤 秀夫
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学童用の棒状画材。原語は一般に鉛筆、鉛筆画の意味に用いられるが、歴史的には混乱したことばであり、美術技法書では、顔料の粉末につなぎ剤を加えて固めた画材の総称としている。鉛筆、パステル、粘りチョークなどを含み、レオナルド・ダ・ビンチの記述にもその初期的なものの製法がみられる。日本のクレヨンは1917年(大正6)にアメリカから輸入されたものを手本につくられ、パラフィン、木蝋(もくろう)などの油脂をつなぎ剤として熱し固めたものである。大正期、児童を手本の模写から解放して直接自然に親しませようとする自由画教育が山本鼎(かなえ)らによって提唱され、これによって全国児童の間に普及した。その後、クレパス(商品名)など、ワックスややし油をつなぎ剤とした軟質のものがつくられたが、これは、塗り重ねたりかき取ったりすることが自由で、造形の可能性に、より富んでいるため、低学年学童用としてこのほうが一般的になった。近年はクレヨンと水彩絵の具を混用した技法の教育も盛んである。
[八重樫春樹]
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