日本大百科全書(ニッポニカ) 「東漢直」の意味・わかりやすい解説
東漢直
やまとのあやのあたい
古代の有力な渡来系の豪族。倭漢直とも書く。応神(おうじん)朝に渡来した後漢(ごかん)の霊帝(れいてい)の曽孫(そうそん)阿知使主(あちのおみ)の後裔(こうえい)と伝えられる。高句麗(こうくり)に滅ぼされた楽浪(らくろう)郡の遺民らしい。大和(やまと)国高市(たけち)郡檜前(ひのくま)村(奈良県高市(たかいち)郡明日香(あすか)村)に居住したので、倭漢氏とよばれた。高市郡は漢氏の子孫などに占められ、男女の人民は皆才芸があったといわれる。雄略(ゆうりゃく)天皇16年に漢部(あやべ)を集めて、その伴造(とものみやつこ)になり直(あたい)の姓(かばね)を賜った。朝廷の文筆、財務、外交などに従事し、その後新来の手工業技術者を管理して有力豪族に成長した。6世紀に書(ふみ)、坂上、民、長(なが)、大蔵その他多くの枝氏に分かれ、蘇我(そが)氏と結んで活躍。天武(てんむ)朝の改姓で連(むらじ)、のちに忌寸(いみき)の姓を賜った。
[志田諄一]