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古代日本の帰化人のうち後漢霊帝の3世孫で,倭漢直(やまとのあやのあたい)の祖という。使主(おみ)は敬称,したがって阿智王とも記す。《日本書紀》や《続日本紀》の所伝を総合すると,応神天皇のとき,漢の朝鮮半島における植民地帯方郡から,17県の人夫をひきいて帰化した。そのあと,故郷の百済と高句麗の間に,才芸にすぐれた人民男女が多くいるので,それを連れてくることを願い,実現せしめたという。この説話は,倭漢より新しい今来(新)漢人(いまきのあやひと)の渡来に関するもので,呉から縫工女をつれかえったともいわれ,雄略天皇のとき,阿知使主の子都加使主(つかのおみ)にかかわる所伝とする方が正しいであろう。《古事記》は,倭漢直の祖を阿知直と記しており,阿知使主と阿直岐(あちき)(阿知吉師,阿直史)との混同がみとめられる。
→東漢(やまとのあや)氏
執筆者:平野 邦雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
生没年不詳。古代の渡来人。中国、後漢(ごかん)霊帝の曽孫(そうそん)で、東漢氏(やまとのあやうじ)の祖と伝えられる。応神(おうじん)天皇20年に子の都加使主(つかのおみ)や17県(あがた)の党類を率いて来朝したといわれる。応神天皇37年に都加使主とともに、縫工女(きぬぬいめ)を求めるために呉(ご)(中国、江南地方)に遣わされ、呉王から工女兄媛(えひめ)、弟媛(おとひめ)、呉織(くれはとり)、穴織(あなはとり)の婦女を賜り、41年に帰朝した。ところが天皇は崩じていたので、工女を大鷦鷯(おおささぎ)皇子(仁徳(にんとく)天皇)に献上したという。仁徳天皇の死に際し、住吉仲(すみのえのなかつ)皇子に殺されようとした去来穂別(いざほわけ)皇子(履中(りちゅう)天皇)の危急を救い、履中朝に蔵官(くらのつかさ)に任じられ粮地(りょうち)を支給される。『古語拾遺(しゅうい)』にも履中期に内蔵(うちくら)を建て、出納を記録させたとある。
[志田諄一]
(鈴木靖民)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報
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阿智使主・阿智王・阿知直(あたい)とも。東漢(やまとのあや)氏の祖とされる伝説上の人物。「日本書紀」によれば応神20年に子の都加使主(つかのおみ)と党類17県を率いて渡来し,37年には工女を求めて呉(くれ)に派遣されたという。阿知使主の名は阿直岐(あちき)と酷似し,応神朝に日本に派遣された百済の阿華王の王子直支(とき)の名が,直支→阿直岐→阿知使主のように変化したものであろう。坂上系図などでは,後漢の霊帝の子孫とするが,8世紀以後に造作された伝承である。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
…王仁の裔と称する河内漢氏(かわちのあやうじ)とは同族的な関係にあり,したがって東漢,西漢と連称されるが,氏は別である。 《日本書紀》《新撰姓氏録》さらに《続日本紀》の坂上苅田麻呂の上表文などによると,応神天皇のとき,後漢霊帝の3世孫阿知使主(あちのおみ)が〈党類十七県〉をひきい来日し,さらに子の都加使主(つかのおみ)を呉に遣わし,工女兄媛,弟媛,呉織,穴織の4婦女を連れてかえったというが,これは雄略天皇のとき倭漢氏の一族が呉に使し,〈手末才伎(たなすえのてひと)〉の衣縫兄媛,弟媛,漢織,呉織を連れかえったとする説話と共通する。また阿知使主が,彼の旧居(帯方郡の故地,高句麗と百済の間)には才芸に巧みなものが多いので迎えたいと申請し,村落をあげ連れかえったのが〈漢人(あやひと)〉であるとの説話がある。…
…都加使主(つかのおみ)とも書く。《日本書紀》《古事記》の伝えによれば,応神朝に父の阿知使主(あちのおみ)とともに中国系と称して朝鮮半島から渡来し,同朝の末年に父とともに呉(くれ)(中国江南の地)の国に遣わされて縫織の工女を伴い帰った。また雄略朝に百済から貢上した今来才伎(いまきのてひと)(新来の手工業技術者)の陶部(すえつくり),鞍部(くらつくり),画部(えかき),錦部(にしごり),訳語(おさ)などの管理を命ぜられた。…
※「阿知使主」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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