松貫四(読み)まつかんし

改訂新版 世界大百科事典 「松貫四」の意味・わかりやすい解説

松貫四 (まつかんし)
生没年:?-1798(寛政10)

江戸中期の浄瑠璃作者通称万屋吉右衛門。江戸葺屋町芝居茶屋の主人。業余に浄瑠璃を書き,1774年(安永3)以来12年間に計8曲を上演して,福内鬼外(ふくうちきがい)(平賀源内),紀上太郎(きのじようたろう)とともに江戸操芝居の盛況に貢献した。いずれも合作だが,なかでも75年江戸外記(げき)座で上演した《恋娘昔八丈(こいむすめむかしはちじよう)》は初世竹本筆太夫の美音もあって記録的な大入りをとり,85年(天明5)江戸結城座の《伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)》とともに立作者としての名を高からしめた。彼の作品はほとんど先人の作に手を加えたもので浄瑠璃の常套(じようとう)を出たものではないが,作中に江戸の風俗を点描するなど目新しさがあり,江戸市中に大いに迎えられた。なお,松貫四は歌舞伎俳優の2世中村吉右衛門母方の祖である。
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朝日日本歴史人物事典 「松貫四」の解説

松貫四

没年:寛政10.5.25(1798.7.8)
生年:生年不詳
江戸中期の浄瑠璃作者,江戸市村座の芝居茶屋菊屋の主人。通称万屋吉右衛門。安永・天明期(1772~1789)に江戸肥前座,外記座の作者として活躍した。紀上太郎,福内鬼外(平賀源内)に並ぶ江戸の代表的作者である。多くの正本署名を残したが,なかでも安永4(1775)年初演の「恋娘昔八丈」や,歌舞伎を浄瑠璃化した天明5(1785)年初演の「伽羅先代萩」が著名。先行作に依存した類型的作品が多いといわれている。なお2代目という署名の入った享和2(1802)年刊の正本が存在するが,生没年不詳。<参考文献>『義太夫年表/近世篇1』

(法月敏彦)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「松貫四」の意味・わかりやすい解説

松貫四
まつかんし
(?―1798)

江戸中期の浄瑠璃(じょうるり)作者。通称万屋吉右衛門(よろずやきちえもん)、江戸・葺屋(ふきや)町で市村座の芝居茶屋を営む。福内鬼外(ふくうちきがい)(平賀源内)、紀上太郎(きのじょうたろう)と並ぶ江戸の代表的浄瑠璃作者で、1774年(安永3)から85年(天明5)にかけて、肥前(びぜん)座、結城(ゆうき)座、外記(げき)座のために八編の作を提供した。なかでも吉田角丸との合作『恋娘昔八丈(こいむすめむかしはちじょう)』『伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)』が有名で、その後しばしば上演されている。独創性は乏しいが、文章に優れている。

[山本二郎]

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「松貫四」の解説

松貫四(初代) まつ-かんし

?-1798 江戸時代中期の浄瑠璃(じょうるり)作者。
江戸市村座の芝居茶屋をいとなむかたわら,浄瑠璃の脚本をかく。吉田角丸(かどまる)らとの合作「恋娘昔八丈」「伽羅(めいぼく)先代萩」が有名。寛政10年5月25日死去。通称は万屋(よろずや)吉右衛門。

松貫四(2代) まつ-かんし

?-? 江戸時代後期の浄瑠璃(じょうるり)作者。
享和2年(1802)ごろから活躍した。作品に「敵討操姿鏡(かたきうちみさおのすがたみ)」「女郎花縁助太刀(おみなえしえにしのすけだち)」。

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世界大百科事典(旧版)内の松貫四の言及

【恋娘昔八丈】より

…5段。松貫四・吉田角丸合作。1775年(安永4)8月中旬江戸外記座初演(《義太夫熱心録》《宴遊日記別録》による)。…

【富士浅間物】より

…49年(寛延2)4月竹本座の竹田出雲作《粟島譜嫁入雛形(あわしまけいずよめいりひながた)》はその改訂版。83年(天明3)10月の松貫四(まつかんし)作《内(うち)百番富士太鼓》は珍しく江戸の肥前座初演である。歌舞伎では1758年(宝暦8)3月江戸市村座の壕越二三治(ほりこしにそうじ)作《恋染隅田川(こいぞめすみだがわ)》や,73年(安永2)7月中村座の中村重助作《傾城片岡山(けいせいかたおかやま)》などが古く,上方では1808年(文化5)8月大坂角の芝居の奈河七五三助(ながわしめすけ)作《復讐高根鼓(かたきうちたかねのたいこ)》が決定版的な作品として知られ,その後もいくつかの作品が登場したが,現在はほとんど上演されない。…

【伽羅先代萩】より

…9段。松貫四(まつかんし),高橋武兵衛,吉田角丸合作。1785年(天明5)1月江戸結城座初演。…

※「松貫四」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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