林家彦六(読み)ハヤシヤ ヒコロク

新撰 芸能人物事典 明治~平成 「林家彦六」の解説

林家 彦六
ハヤシヤ ヒコロク


職業
落語家

本名
岡本 義(オカモト ヨシ)

別名
前名=三遊亭 福よし,扇遊亭 金八,橘家 二三蔵,三遊亭 円楽(3代目),蝶花楼 馬楽(5代目),前名=林家 正蔵(8代目)(ハヤシヤ ショウゾウ)

生年月日
明治28年 5月16日

出生地
東京都 品川区

出身地
東京都 台東区

経歴
品川生まれの浅草育ち。小学校を卒業後、ホーロー工場や木地屋などに勤めた。明治45年18歳で三遊亭三福(3代目三遊亭円遊)に入門、福よし。大正3年扇遊亭金八に改名するが、5年師と4代目橘家円蔵の門下に移り、6年橘家二三蔵で二ツ目。8年3代目三遊亭円楽を襲名し、9年真打ちに昇進。11年師・円蔵の死に伴い3代目柳家小さんの預かり弟子となった。12年大阪に赴き、2代目桂三木助から上方の噺を習い、「煙草の火」などを江戸の噺に作り直した。のち4代目蝶花楼馬楽の内輪弟子となり、昭和3年馬楽が4代目小さんを襲名するとともに5代目馬楽を譲られ、東宝名人会などで活動した。戦後、7代目林家正蔵遺族から一代限りの名乗りを許され、25年8代目林家正蔵を襲名。43年に人情ものの「淀五郎」で芸術祭賞、51年には怪談牡丹灯籠」で芸術祭大賞を受賞。滋味あふれる語り口で、駆け出しの頃に初代三遊亭円朝の直弟子・三遊亭一朝に稽古をつけてもらったことから、円朝の衣鉢を継ぐ三遊派の人情噺や道具を使った怪談噺芝居噺を得意とする一方、「二つ面」「笠と赤い風車」「ステテコ誕生」などの新作落語も手がけた。正蔵の名は、7代目正蔵の長男である林家三平が生きているうちに譲り渡すつもりでいたが、三平が若くして死去したため、56年海老名家に正蔵の名を返還し、以後は彦六を名乗った。反骨心があり曲がったことが大嫌いな性格から“トンガリ”とあだ名され、終生長屋住まいで通した。没後の平成7年、ファンやゆかりの人々により若手落語家を対象とする林家彦六賞が制定された。弟子に5代目春風亭柳朝、2代目林家正楽、林家木久翁(初代林家木久蔵)、三遊亭好楽らがいる。著書に「芸の話」「正蔵一代」がある。

受賞
紫綬褒章〔昭和43年〕 芸術祭賞奨励賞〔昭和38年〕,芸術祭賞〔昭和43年〕「淀五郎」,芸術祭賞大賞〔昭和51年〕「牡丹灯籠」

没年月日
昭和57年 1月29日 (1982年)

伝記
定本 寄席界隈艶噺噺家ライバル物語忘れえぬ落語家たち私の出会った落語家たち―昭和名人奇人伝談志絶倒 昭和落語家伝増補 師匠の懐中時計彦六からの手紙―「林家正蔵会」の記録正蔵師匠と私 三遊亭 円右 著,林 秀年 編大友 浩 著興津 要 著宇野 信夫 著立川 談志 著,田島 謹之助 写真林家 正雀 著永井 啓夫,伊東 清 編林家 正楽 著(発行元 三樹書房ソフトバンククリエイティブ河出書房新社河出書房新社大和書房うなぎ書房三一書房一声社 ’10’08’08’07’07’03’96’88発行)

出典 日外アソシエーツ「新撰 芸能人物事典 明治~平成」(2010年刊)新撰 芸能人物事典 明治~平成について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「林家彦六」の解説

林家彦六 はやしや-ひころく

林家正蔵(はやしや-しょうぞう)(8代)

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の林家彦六の言及

【落語】より

… 昭和落語の全盛期は,第2次大戦後,民間放送発足後におとずれた。軽妙な3代春風亭柳好(りゆうこう)(1889‐1956),明快な弁舌の3代三遊亭金馬,粋な3代桂三木助,近代落語の巨星8代桂文楽,独特の名人芸の5代古今亭志ん生,持ちネタの数と至芸を誇った6代三遊亭円生,人情噺,芝居噺の名手林家彦六(8代林家正蔵),新作の闘将5代古今亭今輔(いますけ)(1898‐1976)などが黄金時代を形成した。 1985年現在の東京には,〈落語協会〉に,滑稽噺の名手5代柳家小さん,新作の3代三遊亭円歌(1929‐ ),繊細で粋な2代古今亭志ん朝(1938‐ ),滑稽噺の人気者8代橘家円蔵(1934‐ ),飄逸な個性の10代柳家小三治(1939‐ )らがおり,〈芸術協会〉に,明朗な新作の4代桂米丸(よねまる)(1925‐ ),飄々たる妙味の新作の3代春風亭柳昇(1920‐ ),滑稽噺の10代桂文治らがおり,ほかに5代三遊亭円楽(1933‐ )一門,5代立川談志(1936‐ )一門などがあるが,志ん生,文楽などを筆頭にした名人上手の消えた穴は大きい。…

※「林家彦六」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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