日本大百科全書(ニッポニカ) 「林野三法」の意味・わかりやすい解説
林野三法
りんやさんぽう
(1)林業改善資金助成法および林業等振興資金融通暫定措置法の一部を改正する法律
(2)林業労働力の確保の促進に関する法律
(3)木材の安定供給の確保に関する特別措置法
の3法をさし、1996年(平成8)同時に改正・制定された。これらの趣旨は、日本の林業および林産業の現状と経営環境が一段と厳しくなっているなかで、林業経営から木材産業に至る施策を総合的に講じ、「国産材時代」の到来を現実のものとするうえでの基本的条件を整備するためであると説明されている。しかし、制定の経緯と法律の内容をみれば、木材自給率の著しい低下(1960年87%→1998年20%)、国内林業の採算性の悪化(1965年の林業利子率6.3%→1997年0.3%)、とくに国有林野事業の財政破綻(はたん)(1997年度末累積債務3兆7000億円)と現業部門の全面的民間委託が推進されることに対応した、危機管理政策としての性格を色濃くもっている。
具体的には、「林業改善資金助成法」は林業経営基盤の強化に関する計画の認定制度を充実するとともに、認定計画に従って林業経営規模の拡大、森林施業の受委託の促進、長伐期施業の推進などにより経営基盤の強化を図ろうとする林業経営体に対し、林地取得資金の償還期限の延長、新林業部門導入資金の融通、固定資産の特別償却などの措置を講じるものである。その後「林業改善資金助成法」および「林業等振興資金融通暫定措置法」は、「林業・木材産業改善資金助成法」および「林業経営基盤の強化等の促進のための資金の融通等に関する暫定措置法」に改正された。
「林業労働力の確保の促進に関する法律」(林野庁と厚生労働省との共同管理)は、都道府県に設置する林業労働力確保支援センター(指定法人)を中心として、林業事業体の経営および林業労働者の雇用管理の改善を促進するための措置(機械の貸付、林業労働者の委託募集など)ならびに林業への就業を促進するための措置(林業就業促進資金の貸付など)を講じるものである。
「木材の安定供給の確保に関する特別措置法」は、都道府県知事が森林資源の状況からみて林業的利用の合理化を図ることが相当とみられる地域を指定し、当該地域においては木材製造業者等と森林所有者等とが共同して木材の安定的取引関係を確立し、設備の改善などに関する共同計画を作成するために、林地開発許可の特例、木材安定供給確保支援法人(指定法人)による木材買受代金等にかかる債務保証等の措置を講じるものである。
[野口俊邦]