国有林野事業(読み)こくゆうりんやじぎょう

百科事典マイペディア 「国有林野事業」の意味・わかりやすい解説

国有林野事業【こくゆうりんやじぎょう】

林野庁が行っている国有林の管理・経営事業。独立採算制育成伐採治山などを行い,それに必要な経費林産物の販売や森林の貸付けなどによってまかなう。1947年に事業が発足し,高度成長期には木材需要の拡大によって好調な収支を維持したが,その後,安い外国産木材の輸入の増加などによって林産物収入が減少し,1975年以降赤字が続いている。それを埋めるための借入金が累積し,その返済のためさらに財政投融資資金を借り入れるという悪循環に陥り,1996年度には累積債務が3兆228億円,1997年度の累積欠損は1兆538億円に及んだ。その原因としては輸入木材の増加のほかに,過剰伐採による成熟した森林の減少,環境保全に対する世論の高まりによる伐採量の減少などが上げられるが,最近になって林道整備事業への過剰な投資が指摘されている。その額は,1978年度から1997年度までの20年間で累計9072億円にのぼり,さらに林道開設のための借入金はのべ6933億円,金利と投資額を合わせると1兆円を超える。一方,林産物収入は1978年度に2268億円だったものが1997年度には658億円に激減しており,林道を使って得られる林産物収入は20年のうちに3割以下に低落した。 このように事実上破綻状態にある経営を立て直すため,事業の抜本的改革を進めることが1997年12月に閣議で決定された。改革の骨子は(1)木材生産重視から公益的機能を重視した森林経営への転換,(2)組織,要員の合理化と事業の民間委託,(3)独立採算制の廃止,(4)累積債務の一般会計への繰入れ,(5)流域管理システム確立とそのための基金創設など。このうち(4)については,借入金のうち2兆8000億円を一般会計で引き受け,残りを50年で返済する計画とした。農林水産省と林野庁では1998年10月に,これらの内容を盛り込んだ〈国有林野事業の改革のための特別措置法〉および〈国有林野事業の改革のための関係法律の整備に関する法律〉の国会での成立をうけて抜本的な解決にのりだしている。→緑のオーナー制度流域管理システム
→関連項目林業

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「国有林野事業」の意味・わかりやすい解説

国有林野事業
こくゆうりんやじぎょう

国有林の育成・伐採・治山などを行なう国営事業。林野庁が所管する。1947年成立した国有林野事業特別会計法に基づき,国有林野事業特別会計(→特別会計)で経理,運営されたが,1970年代後半以降,木材価格の低迷や人件費をはじめとする経営コストの増大などにより財務状況が悪化。1987年「国有林野事業の改善に関する計画」が策定された。1998年に抜本的改革が実施され,国土の保全など公益的機能の維持増進に運営方針を転換するとともに,累積債務の多くを国有林野事業特別会計から一般会計に移行させた。2013年国有林野事業特別会計は廃止され,一般会計予算のもとで運営されるようになった。(→林業

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世界大百科事典(旧版)内の国有林野事業の言及

【国有林】より

…長年にわたり地域の製材工業や地元雇用との結合関係の深い所も多い。 国有林野事業は,材価の低迷,伐採量の減少,コストの上昇などにより,近年,経営状況が悪化している。国有林野事業特別会計は,70年度に収支ほぼ均衡であったものが,76年度には400億円の借入れ(財政投融資資金より)が行われ,以降その額は年々急増している。…

※「国有林野事業」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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