木材や石材などの2部材を接合あるいは組み合わせる継手・仕口(しぐち)において,片方の材の端に造り出した突起をいい,これを差し込むため他材に彫った穴を枘穴という。枘を2材のどちらにも造らず,2材の枘穴に別木を植え込むものは雇枘(やといほぞ)である。形状によって,平枘(ひらほぞ),短枘,長枘,二枚枘,重枘(じゆうほぞ),小根枘(こねほぞ),竿枘,蟻枘,扇枘,目違枘,杓子枘などという。二枚枘は細かい工作を必要とする建具の框(かまち)や桟に,重枘は柱上に桁(けた)と梁(はり)が重なる場合,柱天に造り,桁を差し通して梁に差したりする。小根枘は隅柱へ貫(ぬき)を2方向から差す場合に,蟻枘は桁や梁から釣る束(つか)の頂部などに用いる。杓子枘は桔木(はねぎ)の先端に造り,茅負(かやおい)をすくい上げるように用いる。差物を柱に差す場合などは長枘とし,鼻栓や込栓(こみせん)を打って抜けなくする。また,短枘の先端に楔をかませ,枘を差したときに楔が打ち込まれて抜けなくなる地獄枘などもある。このように,枘は部材や位置,力の掛り具合によって使い分けられる。静岡県山木遺跡で発掘された高床倉庫の部材には,上方を長い平枘とした丸太柱と,これを通す枘穴を相欠き仕口にあけた横架材とがあって,すでに弥生時代後期には鉄製の木工具が発達して,枘差しの仕口が造られていたことがわかる。
執筆者:浜島 正士 中国では継手・仕口の類を榫卯(しゆんぼう)と総称する。榫は枘,卯は枘穴を意味する。〈枘〉は《楚辞》九弁篇に〈円鑿にして方枘(ぜい),吾もとより其の鉏鋙(齟齬)して入り難きを知る〉と用例があるように〈榫〉の字の古字。枘の歴史はきわめて古く,新石器時代の浙江省河姆渡出土の高床建物の木造部材に数種の枘,枘穴を工作したものがあるのをはじめ,戦国時代の墓の木槨(もつかく)には後世の木造建築や家具に用いられる枘の諸類型の原型が見られる。
執筆者:田中 淡
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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