改訂新版 世界大百科事典 「染色堅牢度」の意味・わかりやすい解説
染色堅牢度 (せんしょくけんろうど)
color fastness
染料で染色された染色物,あるいは顔料で着色された(顔料捺染,原液着色など)繊維製品は,その染色加工工程や使用中に受ける種々の作用,たとえば日光,風雨,洗濯,汗,摩擦,水浸漬,塩素漂白,海水,ドライクリーニングなどの作用により,変色または退色する。これらに対する抵抗性を染色堅牢度といい,日本においては日本工業規格(JIS)により試験方法,重要な標準,機器等が規定されている。国際的には,各項目の染色堅牢度試験法として国際規格(ISO。International Organization for Standardizationの略称),アメリカ規格(AATCC。American Association of Textile Chemists and Coloristsの略称)などがあり,最終的にはISOの確立への努力がなされている。染色堅牢度試験法は,染色物の堅牢度ばかりでなく染料そのものの堅牢度を試験する。染料の染色堅牢度は,その染料で染色した布について試験を行って判定するのが原則で,染色濃度も影響するため,標準染色濃度表1号,3号,5号(JIS L 0808,L 0810,L 0812)に規定された濃度に染めた布をつくり堅牢度試験を行う。染色物および染料の堅牢度の試験法には,耐光堅牢度試験方法(JIS L 0841,L 0842,L 0843),洗濯堅牢度試験方法(JIS L 0844),水堅牢度試験方法(JIS L 0846),塩素漂白堅牢度試験方法(JIS L0856),摩擦堅牢度試験方法(JIS L 0849),その他がある。染色堅牢度には変退色および汚染の2種類があるので,染色試験片の変退色,または添付白布の汚染,あるいはこれら両者について別々に判定する。染色堅牢度の等級は整数値で表示し,1級が最も低く5級が最も高い(耐光堅牢度は最高8級)。次に耐光堅牢度と洗濯堅牢度の試験方法について述べる。
耐光堅牢度試験方法
染色試験布を変退色の等級判定に用いる標準青色染布(ブルースケール)とともに規定の方法で露光し,試験片の変退色とブルースケールの変退色を比較して判定する。露光は所定の方法に従って日光,およびカーボンアーク灯,キセノンアーク灯によりなされる。ブルースケールは,羊毛平織物を精練漂白後,耐光堅牢度の異なる8種類の青色染料で所定の濃度で染色したもので,1級から8級までの8種類の青色染布からなっている。その堅牢さは等比級数的につくられており,各級のブルースケールを変退色用グレースケールの4号の色差と同程度まで退色(標準退色)させるのに必要な光量は,1級上のものが下級のものの約2倍となっている。
洗濯堅牢度試験方法
試験片と添付白布から所定の方法で調整された複合試験片をセッケンを主剤とする洗濯液に入れて処理し,水洗,乾燥した後,試験片の変退色と添付白布の汚染の程度をグレースケールで判定する。グレースケールは変退色(JIS L 0804)や汚染(JIS L 0805)の等級判定に用いる標準のスケールで,それぞれ5組の無彩色色票(各色票の色差はNBS単位の所定の値が決められている)を台紙にはりつけたものである。
執筆者:新井 吉衞
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報