核抑止論(読み)かくよくしろん

共同通信ニュース用語解説 「核抑止論」の解説

核抑止論

核兵器で報復すると威嚇し、敵対国の軍事攻撃を思いとどまらせるという理論同盟国への攻撃を抑止する戦略上の概念は「核の傘(拡大核抑止)」と呼ばれる。威嚇を裏付ける報復能力を備えて、確実に使う準備があることを敵対国に伝え、認識させる必要がある。敵対国の指導者が理性的に判断することも前提とされ、こうした想定が崩れれば、核抑止が通用しないとの指摘もある。非核三原則を国是とする日本は、安全保障条約を結ぶ米国の核の傘に入っている。

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百科事典マイペディア 「核抑止論」の意味・わかりやすい解説

核抑止論【かくよくしろん】

核兵器保有はその法外な破壊力のために,かえって戦争を抑止する力となるという考え方。核兵器を使用しようとした場合,自国も相手国から核兵器による破滅的な被害を覚悟しなければならず,そのため最終的には核兵器の使用を思いとどまるという論理で,英国チャーチル首相が述べた〈恐怖均衡〉という考えに基づいている。こうして米国,ソ連双方に戦争による破滅的な破壊への恐怖が等しく生まれ,それがかえって〈恐怖による平和〉をもたらすとされた。〈核抑止nuclear deterrence〉という言葉は1957年のパグウォッシュ会議で批判的意味を込めて初めて使われた。ただし,核抑止が成り立つためには相手が第一撃を思いとどまるような報復力を備えていなければならず(米国の大量報復戦略),結果的に米ソはこの核抑止論に基づく核戦略に従い,激しい核軍拡競争に走ることになる。1980年代以降には米ソ間で核軍縮への道が開かれたが,冷戦体制の崩れた現在でも米国,ロシアをはじめとした核保有国の核戦略は基本的にこの考えに立っているといってよい。
→関連項目安全保障

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