獄具の一種。古くは「かし」ともよばれた。木でつくられ、首、手または足にはめて、犯人あるいは被疑者の自由を束縛するためのもので、それぞれ首かせ(枷)、手かせ(杻)、足かせ(梏)があった。(なお『令義解(りょうぎのげ)』では杻を足かせの意味としている)。糟令制では、その罪が死罪にあたる者には枷と杻とを加え、死罪にあたる婦女子および流罪にあたる者には杻を去って枷だけを加え、杖(じょう)罪にあたる者にはかせを施さず、出入りだけを禁じる(散禁(さんごん)という)とされた。枷、杻、梏はいずれも木製であるが、枷には鉄製のものもあり、これを釱(かなぎ)と称した。これは足につける鉄の鎖で、徒囚を労役させるときに枷では不便なので、枷を外してかなぎをつけさせたのである。766年(天平神護2)に、犯人の逃亡に備えるために、釱に鈴をつけたことがある。平安時代、検非違使(けびいし)が京都の刑政をつかさどるようになってから、毎年5月、12月の両度、徒囚を東西の市(いち)に連れて行って、公衆の面前で釱をつける儀式が行われた。これを著釱政(ちゃくだのまつりごと)とよび、のちに年中行事化された。
[石井良助]
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