中国,近世における農村の集団的な武力闘争。械とは武器のこと。中国の前近代社会では,官憲の力が農村の末端社会まで及ばないうえに,盗賊・匪賊が横行するので,農村では団結して防衛し,ときには山寨・堡塁を築いて緊急の際たてこもるなど,共同して故郷の村を守る風習が強かった。とりわけ中国の中南部においては,一村農民が同姓あるいは二,三姓でまとまるなど,血縁的な同族部落の性格が根強く,閉鎖的な孤立性をもっていた。そこでこういう排他的な村落あるいは同族相互の間に,何らかの契機で紛争が発生すると,村民族人は刀・槍ときには鉄砲をもち出して戦い,実力で解決をはかろうとする。紛争の契機となるのは,水争い,墳墓争い(争墳)や境界の争いであり,あるいは土着の村民と,新しく移住してきた客民との間の争いもあった。村民族人の人数は数百から数千人にものぼり,貧民を傭兵として用い,官憲に逮捕されるのを恐れて,真の主謀者は背後にかくれ,逮捕覚悟の人物を表面に立てるとか,また単独の同族だけでなく,たがいに複数の族の連合をはかるなど大規模なものもみられた。械闘は沿江沿海の6省とくに福建省の泉州・漳州,広東省の潮州などが有名である。械闘で死者・負傷者が出るが,その場合にそなえて同族間で資金を集めてたくわえ,遺族らのその後の生活を保証した。海外に出た華僑も資金を送って援助することがある。新中国になり,農村のこういう排他的な閉鎖性・孤立性が解消されるにつれて,械闘の現象もなくなったものと思われる。
執筆者:北村 敬直
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…中国南部に移住してきた原因,経路には疑問があるが,彼らの伝承によれば,(1)4世紀初めの永嘉の乱,(2)9世紀末の黄巣の乱,(3)12世紀初めの北宋の崩壊,(4)17世紀の明の滅亡を契機として,黄河流域の漢民族がしだいに南下して以上の地域に定着し,先住の土着民から客家といわれ,やがてみずからもこれを他と区別する呼び名としたという。彼らは独立心に富み団結力が強くて簡単に土着民と融和せず,械闘(かいとう)といい武器をとって激しい争いを繰り返した。清ではこれを解消させるために,客家を海南島などへ強制移住させたほどである。…
※「械闘」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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