日本大百科全書(ニッポニカ) 「業務命令」の意味・わかりやすい解説
業務命令
ぎょうむめいれい
業務遂行のため、使用者が従業員に対して発する命令または指示のこと。就労、残業、出張、配転など、個々の具体的必要に応じたさまざまな形態で行われるこのような命令は、使用者が多数の従業員を雇用して組織的に活動を展開するうえで必要不可欠である。命令として強制力をもつ根拠は、労働契約によって従業員が使用者の指揮命令に従って働く(従属労働)ことに合意したという点に求められる。したがって、この命令に従わない場合、契約違反、責務不履行の責めを負うことになり、就業規則などによって懲戒処分の対象とされる。その反面、業務命令は、労働契約、法令、労働協約、就業規則、労使慣行の範囲内でのみ有効である。したがって、これらに反する命令、正当な組合活動を妨害する命令は無効であり、また、争議中は原則として拘束力をもたない。
[森本三男]