特定の業界,職業,経済的利害を一にする社会集団などの中で発行される定期刊行物。業界専門紙または専門紙という呼び方もある。業界紙は,一つの業界の動向・盛衰に左右されるが,業界や経済的諸集団等の多様化,多元化により複数の業界紙が生まれ,新しい業界の出現でまた新種が生まれる。この場合の業界というとき,たんにマーケットの対象にとどまらず,業界を越えた関心分野,問題領域,さらに国際的領域,政策分野さえありうる。とくにマーケット・セグメンテーションや新製品開発,新しい社会問題の発生,地域主義思想の普及は,それぞれに専門紙を生む起動力の一つになっている。業界紙というとネガティブなイメージも否めないが,マス・メディアがスケール・メリットに追われ,きめの細かい報道に欠けるため,関係者からは一つの情報源として尊重されるものが多くなっている。アメリカでは,その業界の内部の責任あるスタッフでないと購読できない業界紙や,世界各地に読者をもつものまであり,部数十数部の地域の建築関係紙から,100万部台の書評紙,ビジネス紙まで重層化している。このうち約500紙誌が1980年現在アメリカ業界紙協会(ABP。1906設立)へ加入,ABCによる発行部数の公査を受けている業界紙も多い。日本では1901年創刊の《帝飲食糧新聞》など百数十紙が日本専門新聞協会(1947設立)に加入している。なお,ニューズ・レターも,アメリカでは1万種あるとされ,さらに細分化されたビジネス情報を求めて増大の傾向にある。
執筆者:田村 紀雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
特定業界内の専門紙。読者も、当該の業界関係者を予定して編集発行されるものであることが多い。専門紙が、政治、経済、工業、書評、スポーツ、教育の専門紙といったように把握できるのに対し、業界紙は、さらに細かく、各個別産業内の情報を取り扱う業界専門紙ということができる。内報、内報紙と称されることもある。英語ではtrade paper, business paperといわれる。刊行形態は日刊、週刊、旬刊、月刊などさまざまで、業界誌というべき雑誌形態のものもある。
日本では資本主義の発達とともに、1890年代ごろに誕生、発展していったが、第二次世界大戦中、1941年(昭和16)の新聞統制で一県一紙体制とされ、現在の業界紙の多くは戦後に創刊された。業界紙の団体としては日本専門新聞協会があり、2011年(平成23)1月時点で95社がこれに加盟しているが、1980年代中ごろから東京だけで1000社以上が存在するという推定もあり、その数と種類の実態はきわめてつかみにくい。
[桂 敬一]
『佐野眞一著『業界紙諸君!』(1987・中央公論社)』
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