改訂新版 世界大百科事典 「極小曲面」の意味・わかりやすい解説
極小曲面 (きょくしょうきょくめん)
minimal surface
Sを曲面とし,Pをその1点とする。PにおけるSの法線(PにおいてSに立てた垂線)を含むすべての平面を考え,これらの平面によるSの切口である曲線の曲率(≧0)に,法線のある向きに関して曲線が凹であるか凸であるかに応じて正負の符号をつける。このとき,これらの最大値と最小値の和が0となるならば,PにおけるSの平均曲率は0であるという。曲面上の各点において平均曲率が0のとき,この曲面を極小曲面という。例えばカテノイド(懸垂線をその対称軸に垂直な直線の周りに回転したときに生ずる曲面)は極小曲面である。極小曲面S上に十分小さい単一閉曲線(自分自身と交わらない閉じた曲線)Cをとれば,Cを境界にもつ曲面のうちで面積が最小となるのはCによって囲まれたSの部分である。極小曲面という名もこの性質に由来する。閉曲線を与えてこれを境界にもつ極小曲面を求める問題を,これに関する興味ある実験を1873年に行ったプラトーJ.A.Plateauにちなんで,プラトーの問題という。すなわち,彼は,与えられた曲線を針金で作って,これを表面張力の小さい液体のなかに浸してから取り出すと,針金に張られた薄膜は極小曲面の模型となることを示した。数学的にはプラトーの問題は変分法を用いて解かれる。
執筆者:中岡 稔
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報