機能性胃腸症(機能性ディスペプシア)(読み)きのうせいいちょうしょう(きのうせいディスペプシア)(英語表記)Functional dyspepsia(FD)

六訂版 家庭医学大全科 の解説

機能性胃腸症(機能性ディスペプシア)
きのうせいいちょうしょう(きのうせいディスペプシア)
Functional dyspepsia(FD)
(食道・胃・腸の病気)

どんな病気か

 胃に潰瘍(かいよう)がんなどがあるのではないかと疑うような胃の不快症状、たとえば胃もたれや胃の痛みがあるのに、検査をしても症状の原因になりそうな病変が見つからないとき、これを機能性胃腸症(機能性ディスペプシア)と呼びます。かつては、慢性胃炎神経性胃炎胃下垂(いかすい)胃アトニー()けいれんと呼んでいたこともあります。

原因は何か

 症状が起こる原因として、胃の動きが悪くなっている、胃の伸縮性(柔らかさ)が低下している、胃酸の刺激を受けやすくなっている、ピロリ菌ヘリコバクター・ピロリ)によるわずかな炎症が影響している、脳が敏感に感じやすくなっている、などが考えられます。また、ストレスも症状の悪化に少なからぬ影響を与えます。いずれの原因でも、胃に対する刺激を脳が敏感に感じているという点では一致します。

症状の現れ方

 食後の胃もたれ感、少ししか食べていないのにおなかが苦しくてそれ以上食べられない、食事とは関係なく胃が痛い、あるいは胃のあたりが()けるように感じる、といった症状が一般的です。「みぞおちのあたりがはる」、「重苦しい」、「ムッとする」など、さまざまな言葉で表現されます。不眠やストレス感、体のあちこちに不調感があることもあります。

検査と診断

 50歳以下の人では、次の警告症状がなければ内視鏡検査は不要です。50歳以上、あるいは警告症状がある、そしてどうしても検査を受けたいという人には内視鏡検査を行います。

①思い当たる節のない体重減少、②吐いたものや便に血が混じる、あるいは③真っ黒い便が出る、という症状を警告症状といいます。なぜならば、このような症状がある時には潰瘍やがんが疑われるからです。④以前に潰瘍やがんの治療を受けたことがある、⑤家族に潰瘍やがんになった人がいる、という条件も警告症状とみなします。

 内視鏡検査、そして場合によっては腹部超音波検査も行って、症状の原因となる病気があるかどうかの確認をします。

治療の方法

 治療には、胃の運動を調整する薬剤、胃酸を止める薬剤、ストレスを和らげる薬剤などを使います。

病気に気づいたらどうする

 生命に影響を与える病気ではありませんが、日常生活にはかなりの影響が出てくることがあります。市販の薬剤で対応している患者さんも少なくありませんが、医療機関での適切な検査と対応があれば、症状はずっと楽になります。

関連項目

 慢性胃炎胃・十二指腸潰瘍胃がん

本郷 道夫

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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