歌島庄(読み)うたのしまのしよう

日本歴史地名大系 「歌島庄」の解説

歌島庄
うたのしまのしよう

尾道と狭い水道を隔てて対するむかい島を荘域としたと思われる荘園であるが、史料的には「歌島」とのみ記される。現在向島は尾道市域分と御調みつぎ向島むかいしま町とに分れるが、島の北東端尾道市向東むかいひがし町にうた地名が残る。「和名抄」記載の御調郡の郷名に「歌島」があり、中世には朝廷大炊寮領であった。「吾妻鏡」文治六年(一一九〇)四月一九日条に、伊勢神宮遷宮のための役夫工米未済の所として備後国歌島がみえ、「家清乍為地頭、自大炊寮妨之云々、付寮可有其催也」とある。未済の原因は地頭家清の怠慢ではなく、領主の大炊寮が拒んでいるからとしている。大炊寮領を管理していたのは大炊頭中原氏であったが、南北朝にもその関係は続いており、中原師守の「師守記」康永四年(一三四五)四月一一日条に「歌嶋当年料公用十貫文且進上之」とみえる。

この島の鎌倉末期の様子については厳島神社蔵反古裏経紙背文書によって詳しく知ることができる。この反古裏経は華厳経四五、大集経八、大集月蔵経二の計五五巻が現存し、その料紙は連歌懐紙平家物語写本数枚を含む公私古文書を継合せたものである。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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